10.「颯馬」と「アドニス」
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1ーB教室。
「羽風先輩に追いかけられた!?」
「大変だったねぇ」
ゆうたとひなたが言った。
「智可愛いから、でも今まで会わなかったのが奇跡だよ」
それだけ智は上手く男子の中に紛れ込んでいた。
ひなたは智の髪を一房すくう。
「で、ポニーテールにはしないの?」
「しない」
ひなたの指から髪がさらりと落ちた。
ひなたとゆうたは目を合わせる。
(よっぽど恐かったんだ)
2人は話題を変えようと考えた。
「あれぇ~?智ちゃん、リボンの結び方がいつもと違うんだぜ」
光が言った。
「神崎先輩が結んでくれたの」
智の表情が明るくなった。
「乙狩先輩も気づいたんだよ」
嬉しそうに言う。
数日後。
颯馬が部室に入ると既に智がいた。
一瞬、智がクラゲの水槽の中にいるように見えた。
クラゲを愛しそうに見つめてい智。
颯馬には気付かない。
クラゲも智に寄り添うに、なついているように見える。
智は颯馬に気付くとそちらに微笑んだ。
「こんにちは、神崎先輩」
智はよく海洋生物部に来た。
クラゲを気に入っているらしく、ただクラゲを眺めている時が多かったが、奏汰に教わって世話をしたりもした。
智自身、似たような雰囲気があった。
気がつけばそこにいたり、穏やかに、優雅に動いているが、時折(一部に)警戒心を持ったり。
「クラゲさん」
可憐な声でクラゲに話しかけ、水槽をトントンとつつく。
「どうしたら、あの人は振り向いてくれるかなぁ」
小さな声で、歌うように言った。
「もっとお話したいなぁ~」
想う人がいるらしい。
誰だろうと好奇心が湧いた。
しかし、智の悲しそうな顔を見て、そう思った自分が恥ずかしくなった。
「その前に決着つけなきゃ。……そろそろ覚悟をきめなきゃね」
真っ直ぐ、力強い瞳。
その姿は海月のように美しかった。
中庭。
「えぇ?アドニスくんなの?」
「絶対そうよ~。あんずちゃんは思わない?」
嵐が言う。
あんずは首を傾げる。
「う~ん」
(こっちも確信がないから、絶対とは言えない……)