10.「颯馬」と「アドニス」
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昼休み。
智は隠れる場所を探して、パタパタと廊下を走る。
そして『海洋生物部』の部室に駆け込んだ。
「…どうしよう」
鍵をかける訳にはいかない、だけど隠れなければ…。
足音が近付いてきた。
「智殿?」
「!?」
振り返ると颯馬がいた。
「神崎先輩」
「どうかなされたか?」
「変な人に追いかけられて……助けてください!」
智が隠れるのと同時に部室の扉が開いた。
入室した人物は颯馬に話しかけた。
良く言えば親しげに、悪く言えば軽すぎる。
逆に颯馬の対応は冷たかった。
相手が退室したのを確認すると颯馬は智が隠れている場所に近付いた。
「もう良いぞ」
小さく踞っていた智が顔を上げる。
まだ不安そうな表情だが、隠れた場所から出ようとした。
すると水槽の角にリボンが引っ掛かり、スルリと髪から外れた。
智はため息をついて、再び踞った。
会いたくない人がいる学院に転校、これはしょうがない。
親の帰国、別に良い。
ポニーテール、最初は嫌だった。
でも毎回嵐がキレイにセットしてくれるから、今は嫌じゃない。
凛月に噛みつかれる。
……思った以上にショッキングな出来事だった。
知らない3年生に追いかけられる、………正直こわい。
いろいろな事が重なって起こる。
もう疲れて髪を直す気力もなくなった。
突然、手を引かれた。
颯馬は智を立たせると、リボンを持って智の後ろにまわった。
髪を簡単にまとめ、首のところでリボンを結んだ。
「これで良いか?」
颯馬が聞くと智は振り返って微笑んだ。
「ありがとうございます」
数分後。
「智がきましたね」
奏汰が言うと颯馬は驚いた。
智が部室を出たのは数分前、何処かで会ったのかと考えた。
奏汰が1匹のクラゲを指差した。
「このこのきげんがいいです」
そのクラゲがいる水槽は智が部室を出る前につついていた。
それを颯馬は見ていた。
(智殿は何度もここに来ていたのか)
2ーA教室。
「あら~、リボンとれちゃったの?」
あんずが言うと智は頷いた。
「神崎が結んだのか?」
アドニスが聞くと、智は驚きながら頷いた。
「何でわかったんですか?」
「結び方が似ている」
アドニスはリボンの結び目を見る。智はそんなアドニスをジッと見る。
「智ちゃん?」
あんずが声をかける。
「はっ!なんですか?先輩」
「うん、髪、どうする?ポニーテールにする?」
智は首を横に激しく振る。
「いえ、いいです!」
「そう?」
「はい!」
頑なに拒んだ。
後に颯馬から話を聞いて、アドニスは納得、あんずは頭を抱えた。