10.「颯馬」と「アドニス」
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翌朝。
あんずは智に学院近くの公園に呼ばれた。
智を見つけるとあんずは目を丸くした。
智がスカートをはいていた。
ズボンでの制服姿を見慣れてただけに衝撃だった。
「おはようございます」
「…おはよう」
あんずは智を頭から足まで仰視した。
ネクタイはそのまま。
スカートからは細い脚が出ていた。
カバンは転校当初から使用している、前の学校の指定カバンだった。
ちなみに校章は入ってない。
なにより少しだが、女性特有の曲線がある。
どこから見ても女学生。
「……どうしたの?」
「昨日、両親が帰ってきまして…」
智は事情を話した。
「男子の制服は秘密だったわけね」
「はい。……それで、あの…」
智はソワソワと落ち着かない。
「何?」
「証明写真…撮って以来、着てなかったので………何か、落ち着かなくて」
顔を赤くして、小さい声でポツポツと言った。
(可愛いなぁ)
「大丈夫よ。そのうち慣れるわ」
2ーA教室。
「でもその髪形は駄目よ」
嵐が強く言った。
智の髪形はいつも通りだった。
嵐は智をあんずの席に座らせるとリボンをほどいた。
「あんずちゃん、櫛貸して」
「は、はい」
あんずから櫛を受け取ると智の髪をとかした。
「あ、あの」
「じっとして」
「……はい」
嵐の気迫に智も黙った。
あんずと周りの生徒たちは興味津々で見ている。
そして
「できたわ」
『……え?』
智もあんずも周りもポカンとした。
「……ポニーテール」
あんずが呟くように言った。
嵐が気合いを入れていたので、どんな凝った結い方をするかと思っていたが、ただいつもより高い位置にまとめただけだった。
「わぁ、智可愛い!」
最初に言ったのはスバルだった。
「…どうも」
「ザキさんとお揃いだね♪」
「そうですね」
ご満悦の嵐は、「シンプルが一番!」と言ってさっさと自分の教室に帰っていった。
一方、智は少し不機嫌そうだ。
あんずには心当たりがあった。
(証明写真の髪形がポニーテールだったものね)
一度、智の証明写真を見せてもらった。
シンプルで、顔回りをスッキリと見せる髪形。
写真の中の智はいくらか大人らしく見えた。
転校前まではポニーテールが主だったらしい。
しかし、やめてしまった。
智はため息をつきながら、自分の教室を目指してトボトボと廊下を歩いていた。
周りの視線には一切気付かない。
(まさか、またポニーテールをするなんて)
外したいが嵐にバレたら厄介だと感じ、今日1日我慢することにした。
(…あの人に見つからなければ良いか)
あんずに「会いたい」と言って泣きついたにも関わらず、まだ心の準備ができない。
おまけに親の帰国。
外れたと思った鎖が、また絡まった。
いや、元から外れてなかったのかもしれない。
「智?」
智が顔を上げると教室前に葵兄弟がいた。
声を発したのはどちらだろう。
2人共、他の生徒同様に驚いた表情をしていた。
「おはよう。ひなたくん、ゆうたくん」
とりあえず挨拶した。
「どうしたの智。女の子みたい」
ひなたが言った。
「智は最初から女の子だよ」
ゆうたが言った。
それから嵐は時々智の髪をポニーテールにした。
智が何故?と理由を聞いても答えてくれなかった。
「お姉ちゃんは智ちゃんと颯馬くんをくっつけたいの?」
あんずが聞いた。
「あら違うわよ。どうして?」
「スバルくんが言ってたの『リボンが白い日はザキさんとお揃いだね』って」
「智ちゃんが気づいたら、おしまいね」
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