9.「渉」と「光」
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部活見学を終え、智はガーゼを取り替える為、あんずと保健室にいた。
「思ったより深くないわね」
あんずはひと安心した。
「あんず先輩、凛月ちゃんはいつからああなんですか?」
「私が初めて会った時には既にああよ」
智は凛月に掴まれた方の手を見る。
「……凛月ちゃんは男なんだよね」
幼い頃、繋いだ手。
あの頃は大差ない大きさだった。
だけど、前日掴んできた凛月の手は自分より大きくて、逞しくて、美しかった。
(あの人も、そうだった)
忘れてない。
手の感触も
温もりも
優しい声も
悲しそうな瞳も
「智ちゃん?」
あんずの呼びかけに智は顔を上げる。
「どうしたの!?やっぱり痛む?」
あんずの問いに智は首を横に振る。
しかし、目が熱くなり、堪えられなくて、涙が流れた。
拭っても拭っても溢れてきた。
あんずは智を抱き締め、何も言わず、頭や背中を撫で、智が落ち着くのを待った。
智はあんずにしがみつく。
「……に会いたい」
ずっと拒んでいた言葉を口にした。
「どうしたの?光ちゃん」
「ん?ん~…」
光は考え事をしていた。
そして、それを嵐に言うか迷っていたが、やがて口を開いた。
「智ちゃんはアドちゃん先輩のこと、どう思ってるのかな?」
嵐は目を丸くする。
「どうして?」
『光くん、今日は乙狩先輩は来る?』
『今日は来ないんだぜ』
『……そう』
「なんか、ホッとしたみたいな、でもガッカリしたみたいな…」
「あらあら!」
嵐が明るい口調で言った。
光は不思議に思い、嵐の方を見る。
嵐は何か気付いたらしく、瞳を輝かせている。
しかもその表情は楽しそうだ。
「嵐ちゃん先輩、何かわかったの?」
「もちろん!でも教えてあげることは出来ないわ」
嵐が言うと光は頬を膨らませた。
「え~、何で?」
「それは智ちゃんにとっては秘密なんだから」
嵐は人指し指を口にあて、片目を瞑った。
「だから光ちゃんも知らないふりをしてあげて」
納得いかないという顔をしながらも、光は頷いた。
(それにしても、智ちゃんに虫がつかないようにしてる人達は大変ねぇ~)
嵐はそっとため息をついた。
学院から帰宅後、智は着替えて近くのスーパー買い出しに行った。
次の日にあんずと嵐が家に来る。
智の両親が海外出張中(正確には出張は父で母はついていった形)と知った2人は何かと智の世話を焼くようになった。
それを申し訳なく思った智は2人を夕飯に招待した。
2人は喜んで招待を受けた。
あんずはそのまま泊まることになった。
商品を見ながら智は楽しくなるのを感じた。
(お菓子は買おうかなぁ。それともデザートと一緒に今日作ろうかなぁ)
買い物を済ませ、家に着くと灯りがついていた。
「消し忘れたかな?」
そこに人影が見えた。
「!」
智の足が止まった。
To be continued.
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