9.「渉」と「光」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日。
「ん~?」
光は智を見つめ、首を傾げる。
「智ちゃん、いつもと違うんだぜ」
「そう?」
「うん、なんか違う」
智はいつもの格好だった。
長い髪を可愛らしいリボンでゆるく括っている。
制服も変わらず下はズボンのまま、ネクタイもちゃんとしている。
だけど、どこか違っていた。
光の話を聞いたゆうたと忍もまじまじと智を見る。
「確かに、でもなんだろう?」
「ん~」
「そんなに違う?」
智は首に手をあてる。
「あっ!ボタンだ!」
ゆうたが気付いた。
智はいつもはシャツの第一ボタンは外している。
だけど、今日はしめていた。
「苦しくない?」
光が聞く。
「うん、大丈夫」
「急にどうしたでござるか?」
「ちょっと、虫に刺されて」
智は目をそらしながら言った。
「ふうん」
「ところで、司くんは?」
智はB組の教室を見回す。
司は教室にいなかった。
「さあ」
「そう、また来るね」
そう言って智は教室を出た。
「あ、司くん!」
智は廊下にいる司を見つけ、駆け寄った。
「!」
「あの、……この間はごめんなさい」
小さな包みを司に渡す。
中身は智が焼いたクッキーだ。
「じゃね!」
智は立ち去ろうとした。
「待ってください!」
司が智の肩を掴む。
「!」
智が顔をしかめたのを見て、慌てて離した。
「す、すみません」
「ううん。何?」
智は真っ直ぐ司を見る。
司は気まずそうに俯く。
「私の方こそ、すみませんでした」
あの時から言いたかった一言。
「司くん」
司が顔を上げると、すぐ目の前に智の顔があった。
「良かった。痕になってない」
智はふわりと微笑んだ。
「ねぇ、司くん。今度、弓道部を見学させて」
司は驚いた。
そして笑顔になった。
「はい!是非!」
昼休み。
2ーA教室。
「ねーちゃん」
「あら、光くん」
「今日、智ちゃんが陸上部の見学に来るんだけど…」
「智ちゃんがどうかしたの?」
あんずは不思議に思った。
智の陸上部の見学は嵐が取り付けた。
その時は光も喜んでいた。
だけど、今の光はどこか不安げだ。
「ねーちゃん、智ちゃんが怪我したの知ってる?」
「怪我!?」
「首のところ、智ちゃんは虫に刺されたって言ってる」
「…ああ、知ってるよ」
「……本当に虫刺されなのかな?」
虫刺されじゃないことをあんずは知っている。
あんずが手当てをしたから。