9.「渉」と「光」
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あんずと北斗と別れた後、智はガーデンテラスを歩いていた。
「はぁ、疲れたぁ」
渉に会ったと言ったら、あんずと北斗に
『大丈夫だった?』
『変なことされなかったか?』
と本気で心配された。
「日々樹先輩、良い人だった…」
そう言ったら
『悪い人ではないけど・・・』
と複雑な顔をされた。
(まぁ、演劇部の人だし、読み合わせの時は演技だよね)
最初に顔を合わせた時、そして智が部室を出ようとした時に見せたのは素顔だろう。
渉の言葉がまた頭を過る。
智は頬に手をあてる。
まだ熱い。
「バレてないよね?」
(これ以上、あんず先輩に迷惑をかけられない)
トン
何かが足に当たった。
智が下を見ると、誰かの足が繁みから出ていた。
「っひ!」
智は短い悲鳴をあげた。恐る恐る繁みを覗く。
「凛月ちゃん」
凛月が寝ていた。
智は凛月の寝顔をジッと見つめた。
(綺麗だなぁ)
前髪に触れる。
「わぁ、サラサラだぁ」
凛月が男だと知って驚いたが、幼馴染みと今も仲が良いとわかって、嬉しかった。
同時に申し訳なく思った。
「………ごめんね、凛月ちゃん」
(あの時、無くしたくなかった物を、……オレは自分から手離した)
ふいに髪を撫でている手を掴まれた。
「!」
目を開けた凛月と視線が合った。
「日々樹先輩、智に会ったの?」
「会いましたよ。姫君が着ぐるみ以外の智の写真を見せないのも納得です」
「…ふん」
桃李は頬を染めて、顔を背けた。
(おやおや)
渉は微笑ましく思った。
視線を『彼』に向ける。
『彼』はいつも智を気にかけていた。
あんずや後輩からよく話を聞いている。
だけど、自分からは決して動かない。
それを我慢していることは直ぐに解った。
渉は『彼』が我慢をやめて、どう動くのか、好奇心がわいた。