9.「渉」と「光」
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読み合わせは暫く続いた。
時々、渉が智と友也に問いかけ、智と友也はそれについて話し合う。
「まるで読書会ですね」
「おや、気付きましたか」
智が言うと渉は微笑みかける。
「相手がその場面をどう考え、その人物をどう思っているのか、知るのは大事です」
渉は智の隣に座った。
「智はシャーロットをどう思いますか?」
智は暫し考える。
「シャーロットはとても現実的な女性です」
「そうですね」
渉が同意する。
「シャーロットの言葉は、不思議と物語から引き戻されます」
「それって、なんか……うーん」
友也が一生懸命に言葉を探す。
「集中できない?つまらない?」
智は首を傾げながら聞く。
「確かにシャーロットの存在は人によって見方は違う」
台本を見る。
シャーロットの台詞を指でなぞる。
「でも私は、シャーロットの存在は大切だと思うの」
「どうして?」
智は友也を見る。
「現実を教えてくれるから」
智の携帯が震えた。
中身を確認すると立ち上がった。
「今日は失礼しますね。友也くん、また明日」
「智」
部室を出ようをする智を渉が引き止めると智の耳元で何か囁いた。
途端に智は顔を赤くした。
渉を見上げる。
渉がニッコリすると、智はさらに顔を赤くした。
友也が初めて見る表情だった。
智は顔を両手を隠して部室を飛び出した。
「智に何を言ったんですか?」
友也が聞くと渉は綺麗に笑うだけだった。
智は廊下を早足で歩いていた。
頭の中で渉の言葉がぐるぐる回る。
『……ならば、仮面を外しなさい』
携帯を見る。
先程の連絡はあんずからだった。
(…あんず先輩に知られる訳にはいかない)
2ーA教室。
あんずは北斗と資料整理をしていた。
「奏太先輩が言ってた『会いたがってる人』が渉先輩だったなんて思わなかったなぁ」
まとめた資料をホチキスでパチパチととめていく。
「誰だと思ってたんだ?」
北斗が聞く。
「……誰も思いつかなかった」
あんずは嘘をついた。
(真っ先にあの人が浮かんだ。きっと智ちゃんも同じだろうなぁ)
「渉先輩の行動は予測不可能だし…」
「まぁ、会わせるのに躊躇いがあるのは解る」
北斗が同意する。
あんずは出来上がった資料の数を確認する。
そして時間も確認する。
「そろそろ来るかしら?」
あんずは資料整理をする前に智に連絡をしていた。
北斗が演劇部の案内してくれるとだけ説明するつもりだ。
演劇部の見学を北斗に任せ、あんずは渉の足止めをする。
そんな作戦だったが……。
「あんず先輩、北斗先輩」
智が教室に来た。
「あ、智ちゃ…」
『!!』
あんずと北斗の表情が固まった。
「どうしましたか?」
智は首を傾げながら2人に近づいた。
「……その髪」
北斗が言った。
智の髪は三つ編みが一房だけ垂れていた。
それだけならまだ「可愛い」で済んだ。
三つ編みの編み始め部分にバラの造花がなければ…。
あんずと北斗の視線はバラの造花に完全に釘付けだ。
さすがに智も気付きバラに触れる。
「やっぱり、変ですか?」
あんずが首を横に振る。
「ううん、とっても素敵よ!」
北斗も頷く。
「そのバラどうしたの?
「日々樹渉先輩が付けてくれました!」
満面の笑顔で智は言った。