8.「凛月」と「友也」
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(……3年生、やっぱりあの人かな?)
「ひなたくん?」
智が『ゆうた』の顔を覗き込む。
「あ、ごめん」
「ううん、私の方こそごめんね。不愉快だったよね」
智が悲しそうに言う。
「そんなことないよ」
『ゆうた』が微笑む。
それを見て、智はクスクス笑う。
「なんだか、ゆうたくんみたい」
「……何で気づかない」
「そろそろ教えてあげた方が…」
友也と創が言った。
表情
話し方
誰から見ても『ゆうた』は『ひなた』を演じることを止めたことが解る。
だが、智は気付かない。
「あんず先輩が、お菓子を作ってあげたらって」
「…そう」
お菓子作りの話になると『ゆうた』は顔には出さないが少し焦った。辛党の『ゆうた』には完全に専門外だ。
周りは「時間の問題だ」と思った。
バーン!
「ゆうたくん!拙者もうひなたくんの相手は無理でごさる!」
忍が叫びながら教室に入って来た。
「え?」
智は目を大きく見開き、目の前の人物を見た。
「ゆうたくん、だったの?」
「やっと気付いた」
ゆうたが笑うと智は両手を頬にあて、顔を赤くした。
忍を追いかけて教室に入ってきた『ひなた』は智の表情を見て、察した。
「ああ、駄目だよ忍くん。此方から智にバラしちゃ」
「智、いる?」
他クラスの生徒が智を呼んだ。
「ちょっと良い?」
生徒の顔は少し赤かった。
友也は思った。
(ああ、この人もか…)
智は何も気付かない。
無垢な表情のまま、生徒について教室を出た。
そしてこの時、この瞬間、時々感じる不機嫌な気配。
(……まただ)
智を連れていった男子に向けられる、射すような視線。
(誰なんだろう…)
暫くして、智は教室に戻ってきた。
何事も無かったかのように、表情を変えない。
(断ったんだ)
「また断ったの?」
ひなたが聞く。
智が頷くと後ろから抱き締めた。
「じゃあ、俺と付き合わない?」
「ありえない」
ひなたの告白を智はあっさりと切った。
「##NAME1##のこと、大好きなのに」
「さっきの人とは違う意味ででしょ?」
ひなたの智に対する『好き』は『友愛』として。
それは智だけではなく、周りも知っている。
だから、いくらひなたが智に『好き』と言っても空気は穏やかなままだった。
友也は台本に目を戻した。