8.「凛月」と「友也」
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バイオリン教室を飛び出した凛月と智は近くの公園に来ていた。
『バイオリン、嫌い?』
ベンチに座り、凛月はもう一度、同じ質問をした。
智は首を横に降った。
『でも、他にも習ってるし…』
既に幾つか掛け持っていた。
『これ以上増えたら、友達に会えなくなる』
『習いたくないなら、そう言えば?』
『……言えないの』
智は膝を抱えた。
『今まで、こんなことなかった』
昔は嫌なことを嫌だと言えた。
だけど、いつの間にか言えなくなっていた。
智に何を習わせるか、何日も話し合っていたのを知っていた。
体験学習から入って、興味を示したら、そのまま通い始めた。
智は最初、体験学習も拒否した。
習うつもりはないと、意思表示もした。
バイオリン教室もそうだった。
『…なのに、言えなくなってた……恐いの』
そう言った時の周りの、大人の反応が。
『………疲れちゃった』
凛月は智の頭を撫でた。
『大丈夫、解ってくれるよ』
智は顔を上げる。
『ありがとう。……えっと、名前は?』
『凛月。君は?』
『オレは智』
智は初めて笑顔を見せた。
『凛月ちゃん、もう少しお話ししていい?』
「ねぇ、凛月ちゃん。あの時、バイオリン教室にもう1人いたの覚えてる?」
智が聞くと、凛月は首を傾げる。
「さあ、どうだったかなぁ」
「ほら、教室を出ようとした時に追いかけてきた」
「いなかったよ、そんな人」
笑顔できっぱりと凛月は言った。
『…………』
(朔間先輩だ)
(零さんだ)
(お兄様だわ)
真緒、あんず、嵐が顔をしかめた。
智は零と既に会っている。
だけど、お互い知らぬ存ぜぬだった。
そのことは凛月も晃牙から聞いていた。
だから智のことを別人だと思っていた。
再会した時、智がこのまま気付かなければ良いと思った。
「あ!もしかして、軽音部の部長さん?」
やっと零に対する違和感が消えた。
「全然気づかなかったぁ。今度ちゃんと挨拶しなきゃ」
智はニコニコと話す。
「……思い出さなくて良かったのに」
凛月が小さく舌打ちした。
智には聞こえなかった。