8.「凛月」と「友也」
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「あ、真緒くん。凛月くん連れて来てくれたの?」
あんずが真緒と凛月に気付くと、般若が消えた。
「ほら、智、もう大丈夫だぞ。……多分」
真緒に促されて、智は顔をひょこっと出した。
そんな智を凛月は見ていた。
さらさらの黒髪。
輝きが見え隠れする、不安そうな瞳。
「智?」
名前を呼ばれ、智は凛月の見る。
目が合った。
「………凛月ちゃん?」
智はじっと凛月を見る。
白い肌。
艶やかな黒髪。
それに映える、眠たそうな、シャム色の瞳。
「昔、バイオリン教室にいましたか?」
智が聞くと凛月は頷いた。
「やっぱり智だ。髪は伸びたけど、変わってないね」
優しく微笑むと智は頬を染め、再び真緒の後ろに隠れた。
凛月は首を傾げる。
「何でまーくんの後ろに隠れるの?」
「……まーくん?」
智は真緒を見上げる。
「衣更先輩が、まーくん?」
「そう」
智は顔を真っ赤にして真緒から離れ、今度は嵐の後ろに隠れた。
「あらあら、どうしたの?」
「智ちゃん?」
あんずが智に近寄る。
「もしかして、2人とも知り合いなの?」
智は頷く。
「凛月ちゃんとは小さい頃に。まーく…衣更先輩のことは凛月ちゃんから聞いてました」
(やっぱ見えてなかったか)
真緒が苦笑する。
「私、凛月ちゃんのこと、女の子だと思ってました」
「俺も智のこと、男だと思ってた」
「あの頃はよく間違われてたから、気にしてない」
智は昔、髪が短かった。
いつもズボンだった。
口調も男っぽかった。
だから初対面の人は智を男の子と思ってしまう。
(そういえば、あの人は間違えなかった)
あの人は最初から智が女の子だと気付いた。
そして智の髪にリボンを付けた。
智の中に小さな変化があったのは、その頃だった。
「智、今も習い事続けてるの?」
凛月の問いに智は首を横に振る。
「最近、やめちゃったの」
「何習ってたの?」
嵐が聞く。
「お花と、お茶と、日本舞踊と……」
(ああ、だから姿勢が良いんだ)
真緒が納得した。
「…あと着付けとか」
「随分習ってたのねぇ」
嵐が言った。
「バイオリン教室はあれっきり?」
「うん」
「そっか。ちゃんと言えたんだ」
どこか安心したように凛月が言うと、智は笑顔で頷いた。
「凛月ちゃんのおかげだよ。ありがとう」