7.「嵐」と「レオ」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「喧嘩する相手がいることは良いことです」
あんずはそう言いながら脱脂綿に消毒液を湿らす。
「心に溜まった嫌な気持ちを発散させてくれます」
頬の傷口に脱脂綿をあてる。
相手は顔をしかめる。
頬を打たれた時、爪があたったらしく、血が滲む。
「しかし、お互い嫌な気持ちになるのも事実」
脱脂綿を傷口からはなす。
あんずは言葉を続ける。
「だけど司くん、どんな理由があろうと、女の子に手をあげてはいけません」
「………」
あんずが強く言うと司は俯いた。
「あんずちゃん、さすがにちょっと…」
嵐が控えめに言うと、あんずも眉を下げる。
司と、司の隣に座る智を交互に見る。
智は頬に濡れタオルをあてていた。
どちらも何も話さない。
目も合わせない。
嵐が智の乱れた髪を整えていた。
智は大人しくしている。
「はい、できた!」
「ありがとうございます。……ん?」
智は礼を言うが、すぐに異変に気づき、頭部に触れる。
「っな!」
驚きの声をあげる。
何故気づかなかったのかと不思議に思う程、智の髪はキッチリと編み込まれていた。
「あら可愛い!」
あんずが声をあげる。
司も智を見てぽかんとする。
「せっかく可愛いリボンしてるんだもの。ただ括るだけじゃ、つまらないじゃない」
嵐は上機嫌で言った。
「それで、喧嘩の理由は何?」
あんずが救急箱をしまいながら聞く。
「それは…」
「話したら許さない」
司の声を智が遮った。
あんずと嵐は目を合わせた。
「智ちゃん、少し歩きましょ」
嵐が言った。
「え?」
「ほら、行くわよ」
嵐は智を立たせて部屋を出た。
あんずは2人が出たのを確認すると改めて司と向き合った。
「司くん、話してください」
「………」
司は口を開かない。
智の言葉が影響しているのか、少し戸惑っている。
あんずは司を安心させるように微笑んだ。
「智ちゃんの事情は大体知ってます。だから、話しても大丈夫」
その言葉を信じて、司はぽつりぽつりと話した。
あんずは頷き、時々相づちを入れながら、最後まで聞いた。
(……なるほど、最近しつこく言ってこないと思ったら…)
相手は智の気持ちを尊重しつつも、会おうとしている。
「司くん。もう少し、時間をくださいって伝えて」
1/6ページ