6.「真緒」と「司」
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智はあんずから司と一緒に来るようにと言われた。
司もあんずから連絡を受け、放課後、A組に来た。
「お見知りおきを」
同い年とは思えない、大人びた表情に仕種。
「宜しくお願いします」
智も丁寧に返した。
司のことは知っていたが、話すのは初めてだった。
司はどこまでも丁寧で紳士だった。
紡がれる声が、言葉が美しいと感じた。
カチャ。
レッスン室には誰もいなかった。
「まだ誰も来てませんねぇ」
智は扉を閉めて角に荷物を置いた。
「他の方たちが来るまでストレッチでもしますか?」
「……」
「司くん?」
智は司を見る。
司も智を見ていた。
どこか哀しそうに。
静かに口を開く。
「何故、会われないのですか?」
司の言葉に智は目を見開き、そして気づく。
「司くんは弓道部でしたね?」
「はい」
「あの人は、何か言っていましたか?」
「貴女のことをよく聞いてきます。それと…」
司は言おうか言わないか迷っている表情をした。
「…貴女に会いたがっています」
「そう」
「けれど、貴女はそれを望まない」
「うん」
智は俯いた。
(………変わってないな。その優しすぎるところ)
顔を上げて司を真っ直ぐ見る。
「会う気はない」
智ははっきりと言った。
司は智を不思議に思っていた。
時々B組に来ては誰かと少し話して帰る智。
活発で溌剌としていて、笑顔が魅力的だと思った。
しかし、司は智とどう接して良いかわからなかった。
ただ見たこと、聞いたことを先輩に話した。
『元気そうで安心した』
先輩と智が知り合いだと、その時初めて聞いた。
そして、訳あって会うことが出来ないことも。
『智が望まないかぎり、会えない』
いつも穏やかで優しい瞳が、この時は悲しそうだった。
見ている司の胸が痛く感じる程。
『会いたいな』
「会う気はない」
智の言葉に司は目を見開いた。
智は再び俯いた。
部屋を飛び出したかった。
(……最悪だ)
いつも私服だったから何処の学校か知らなかったし、気にしてなかった。
だから偶然だと思った。
お互いの交友関係なんて知らない。
学年が違うからと油断した。
(逃げ隠れなんて、最初からできなかったんだ……)