6.「真緒」と「司」
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レッスンが終わったと凛月に連絡すると教室にいると返事がきた。教室に行くと凛月がいた。
「まーくん、智に会えた?」
「ああ、会えたよ」
「写真ある?」
「ねぇよ」
真緒の返答に凛月は眉を寄せる。
自分の携帯をトントンと操り、写真を1枚、真緒に見せた。
「スーちゃんが送ってきた、智の写真」
「……これって」
そこに写っていたのはリスの着ぐるみ。頬袋に手をあて、可愛らしくポーズをとっている。
智がリスの着ぐるみ姿で彷徨いていると噂がたったのを真緒も知っていた。
「この格好だった?」
「いや、制服だった」
「ふうん、そう」
凛月は写真を閉じた。
『どうすれば良いか解らない』
『こんなの、オレじゃない!』
凛月の脳裏に響く、幼い声。
今にも泣きそうな、大きな瞳の、髪の少し長い、小さな子ども。
(やっぱり人違い)
「気になることがあるなら、明日聞けば良いだろ?」
「……うん、そうだね」
凛月は頷いた。
(きっと智は何処かで、楽しく過ごしてる。大切な人と一緒に……)
智は紙に書かれた名前をじっと見ていた。
(……朔間凛月……リツ)
聞いたことがある名前。
小さい頃、一度だけ行ったバイオリン教室に同じ名前の子がいた。
最近まで忘れていた。
『またね、凛月ちゃん』
そう言って別れて以来、一度も会っていない。
バイオリン教室には通わなかったから。
(きっと人違い。だって、オレが知ってる凛月ちゃんは女の子だもの)
智は紙をバッグにしまう。
昇降口に葵兄弟がいた。
ゆうたが智に気づいた。
「智、今帰り?」
「途中まで一緒に帰らない?」
ひなたが聞いた。
「うん」
智は笑顔で頷いた。
(凛月ちゃんは美人さんになって、今も「まーくん」と仲良くしてる筈。………オレと違って)
「まーくん」を見つけた時の凛月の顔、頬を染め、瞳を輝かせ、可愛らしく、同時に綺麗だと思った。
自分には絶対できないと感じた、美しい表情。
胸がズキリと痛んだ。
「……っ」
誤魔化すようにバッグの持ち手を握りしめた。
忘れていたのに、会いたくなった。
「……会いたいな、凛月ちゃん」
智は呟く。
「誰に会いたいの?」
ひなたが聞く。
名前までは聞き取れなかった。
「昔、助けてくれた人」
智そう応えた。
お互い、すぐ近くにいることに気づかないまま……