6.「真緒」と「司」
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『あの子ね、今日、バイオリン教室に見学に来たんだ』
『へぇ』
『でもさ、通いたくないって』
『なんで?』
貰ったクッキーをかじる。
バターとバニラの香りが強かった。
『友達に会えなくなるからって』
友達と「遊べない」ではなく「会えない」と確かに言ったのだ。
2-B教室。
「…覚えてないよなぁ」
真緒が呟く。
そもそもあの時、智は真緒のことを認識していたかもわからない。
自分があの一瞬のことを思い出しただけでも驚きだ。
(凛月はどうなんだろ?)
寝ている凛月を見る。
真緒が見る限り、凛月はいつもと変わらない。
あの後、智はバイオリン教室に通ったのだろうか?
だとしたら、凛月も少しは覚えているだろうか?
「凛月くんは寝てますかぁ」
「っうお!」
横からあんずの声がして真緒は驚いた。
あんずは真緒の反応に気を悪くせず、教室を見渡す。
「お姉ちゃんもいない。今日は休み?」
「嵐なら今日は午後からだぞ」
「そっかぁ、やっと明日の予定を取り付けたから一番に知らせたかったのに」
「明日の予定?」
あんずが頷く。
「Knightsのレッスンに智ちゃんを連れてくの。これで大体のユニットに紹介したことになるかな」
最近、あんずはあちこちのユニットのレッスンに行っていた。
予定が入っていないユニットにも顔を出していたのは、智を紹介する日取りを決める為。
「少しは休めよ?」
「ありがとう。じゃあ、お姉ちゃんが来たら教えてね」
そう言ってあんずは自分の教室に帰った。
昼休み、嵐が登校してくると真緒はあんずに連絡をいれた。
あんずはすぐに来た。
智を紹介できると伝えると嵐は喜んだ。
「やっと会えるのねぇ。泉ちゃんが『問題児はお断り!』って言ってたから、どう説得したの?」
「昨日、レオ先輩を見つけて智ちゃんのことを話したら『会ってみたい』って」
『王様の命令は絶対!』
あんずと嵐は声を揃えた。
嵐と一通り話してあんずは教室を出た。
「楽しみだわぁ、どんな子かしら?真緒ちゃんは会ったことあるんでしょ?」
「ん、ああ。会ったというか、見たというか……」
真緒はまだ智と話したことがない。
最初に見かけた時、智は涙目で此方に走ってきて、クラスメイトの翠にタックルをかけるように飛び付いた。
あんずが噴水に落ちたと言って、そのまま翠を引っ張って行った。
それから暫く翠から離れなかったし、会話もほぼ翠とあんずとしかしなかった。
だから真緒はスバルが智からクッキーを貰うまで、智はあんず以外の上級生が苦手だと思っていた。
「ん~…」
寝ていた凛月が顔をあげた。
「今何時?」
「もうすぐ昼休みが終わるぞ」
真緒が応える。
「なんか騒がしかったんだけど…」
「さっきあんずちゃんが来てたのよ。明日、智ちゃんをレッスンに連れてくるって」
嵐がウキウキと話す。
「ああ、噂の転校生?…興味ない」
凛月は再び顔を伏せる。
寝息が聞こえた。
(凛月は覚えてないか)
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