5.「翠」と「スバル」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「さ、大吉、帰るよ」
スバルが大吉を抱えようとしたが、大吉は智から離れようとはしなかった。
キラキラした目で智を見上げる。
「………智、何か美味しい物持ってない?」
「美味しい物?……あ」
智はポケットからクッキーの入った小袋を出した。
大吉の目の輝きが増した。
クッキーを左右に動かすと完全に目と顔がそれを追った。
人間用のクッキー。
それを狙う丸い犬。
「………駄目、ですよね?」
「…うん」
スバルは苦笑した。
「先輩、皆さんとどうぞ」
智がクッキーを手離さない限り、大吉は智から離れない。
「え、良いの?ありがとう!」
スバルはニコニコとクッキーを受け取る。
「また明日ね、智」
「はい、さよなら」
『またね、……ちゃん』
「……誰?」
智は昔、誰かにそう言った。
一瞬、真緒の顔がちらついたが、否定するように首を横にふった。
(違う、衣更先輩じゃない。………あの人でもない)
「……もう止めよう」
智は携帯のアラームを設定する。
(少し眠ろう)
目を閉じた。
スバルの後ろを大吉がトコトコとついてくる。
「あ、サリー!」
廊下で真緒に会った。
「おぅ、スバル。大吉の散歩か?」
「うん、今日はもう連れて帰るよ。サリーは生徒会?」
「そう」
スバルがクッキーが出す。
「さっき智からクッキー貰ったんだ。ひとつあげるよ」
「サンキュ。……大吉がすごい見てる」
飼い主に似たキラキラした目を向ける大吉。
その場で食べるのは気が引けるのでティッシュで包んだ。
「じゃあな」
「また明日ね」
そのまま2人は廊下で別れた。
真緒はスバルと大吉が完全に見えなくなってからクッキーを出した。
手作りのアイスボックスクッキー。
サクッと一口かじる。
「!」
真緒は目を見開いた。
知ってる味。
「………思い出した」
ずっと昔、小学生の頃。
『まーくん』
呼ばれた気がして、振り向いたら少し離れたところに幼馴染みがいた。
自分たちより小さい子どもと一緒だった。
後ろ姿で顔は見えなかった。
肩にかかるくらいの髪。
その子はクッキーを渡していた。
幼馴染みは笑顔で受けとる。
『またね、智』
そう言って幼馴染みは真緒の所に駆けてきた。
相手が此方を向き、一瞬だけ顔が見えた。
『またね、凛月ちゃん』
「凛月といたんだ」