5.「翠」と「スバル」
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放課後。
智はひとり、中庭を歩いていた。
クゥ~
(お腹空いたなぁ…)
一休みできる場所を探していた。
甘い花の香りに誘われてガーデンテラスに行こうとしたが、やめた。
目立たないように、けれど自然に見えるように…。
智は単独行動に慣れようとしていた。
(…いつまでも、あんず先輩に頼る訳にいかないし)
智の歩行は少しふらついていた。
「……眠い」
空腹と眠気が同時にきていた。
今日は特に予定はない。
家に帰るという選択肢もあるが、そんな気分ではなかった。
ガサガサ
「?」
ガサ!
茂みから丸い物体が飛んできた。
「っわ」
思わず抱き止めた。
ずっしりと重かった。
立っていられないので、近くの木陰に座った。
飛びついてきたのは、フカフカの柴犬。
「まあ、可愛い!」
クリッとした愛くるしい目。
笑っているような口。
ちょっと(?)肥満気味もするが、それも魅力。
智はすっかりメロメロになってしまった。
空腹も眠気も完全に飛んだ。
「お名前は?」
「大吉だよ」
突然、声がした。
すぐ近くにスバルがいた。
「やっほう」
スバルは智の隣に座った。
「はじめまして、でもないか。この前は話せなかったね。でも、あんずから話は聞いてるよ、智」
彼は翠と一緒にいた。
あんずが名前を呼んでいた。
確か…
「明星スバル、先輩?」
名前を確認するとスバルはニッコリした。
大吉と呼ばれた柴犬が尻尾をパタパタと揺らした。
何か雰囲気が似ている。
「明日はTrickstarのレッスンに来るんだよね?よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
智は微笑んだ。
「学院には慣れた?」
「はい」
「プロデューサーの仕事は?」
「大変ですが、楽しいです」
「良かった」
暫くはたわいもない話をした。
「ところでさ、転校前にサリーと何処かで会ったことある?」
スバルの問いに智はキョトンとする。
しかし、内心穏やかではなかった。
「衣更先輩にですか?ありませんよ」
(………どういうこと?)
智は眉を寄せそうになった。
「ん~、そっか」
スバルはそれ以上聞かなかった。智は大吉を撫でる。
(……桃李くんも同じことを言ってた。だけど…)
顔をしかめそうになり、誤魔化すように大吉を抱き締めた。
(…オレは全てを棄てた。過去なんて、誰も知らない筈)
「智?」
「……大吉はフカフカですね」
智は顔をあげる。
「もしかしたら、校外の何処かのフェスで見かけたかもしれません。出掛けた先でイベントに遭遇はあり得ます」
「あ、そっかぁ」
智の言葉にスバルは納得した。
智も安心した。
(あんず先輩から今までの活動を聞いておいて良かった)