5.「翠」と「スバル」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リス、智は翠と忍の会話を見ていた。
「ねぇ」
扉の前に桃李が立っていた。
ニコニコと天使の笑顔だった。
両手を伸ばし、リスの顔に触れる。
「!」
リスの頭が上に上がる感覚がし、智は咄嗟に抑えた。
桃李は顔をムッとさせた。
「やっぱり智だ。あんずだったら喋ってくれるもん」
桃李は両手を下ろした。
「喋れないわけじゃないよ」
智が言う。
「そう。………ねぇ」
桃李は智をジィッと見る。
ペリドットのような瞳に見つめられて、智は少し仰け反った。
「な、何?」
「僕たち、何処かで会った?」
「?」
桃李の問いに智は首を傾げる。
「テニスコートで会ったじゃない」
「違う。もっと前に」
今度は智が桃李をジィッと見る。
「…さぁ」
智は桃李の髪をワシャワシャと撫でまわす。
「っわ!何するの!?」
「私のような美少女を覚えていないとは、この頭はどうなっているのかと…」
「自分で言う!?」
「ふふ」
智は笑い、今度はムギュと桃李を抱き締めた。
何処かで会った?
すれ違った?
見かけた?
(……姫宮…桃李)
智は桃李の名を繰り返す。
しかし、朔間零のように引っ掛かるものがない。
「一体、私たちは何処で会ったのかなぁ…」
「連れてきたよ」
翠が忍とゆうたを連れて戻ると、智は桃李から離れ、両手をパフパフと合わせ拍手をした。
「本当に智なの?」
「!」
ゆうたが言うと、智の動きがとまった。
「…何でわかったの?」
「えっと、手」
翠が応える。
「手?」
ゆうたが智の右手、忍が左手を握る。
『あ!』
ゆうたと忍が同時に叫んだ。
「う、薄いでござる」
フカフカの着ぐるみ、しかし布地は薄く、中の人間の手がはっきりとわかる。
「腕もそうだね」
ゆうたが腕の感触を確かめる。
「うぅ~、くすぐったい~」
智は両腕をパタパタと動かして、2人の手を振り払った。
「もう!翠くん、忍くん、カバン持ってきて。レッスンに行くよ。翠くんは鉄虎くんがまだ教室にいたら連れてきて」
それぞれカバンを取りに行っている間、また桃李と2人になった。
「ところで智、何でそんな格好してるの?」
「あんず先輩からの指示」
「……写真撮ってもいい?」
「良いよ」
智がそう言うと、今度は桃李の方から抱きついた。
「わわっ」
パシャ
「どう?」
桃李が写真を見せた。
笑顔の桃李とリスのツーショット。
「ああ~、こんな間抜けな顔を…」
智が嘆く。
「着ぐるみじゃ、わかんないよ」
「そうだけど」
ご満悦な桃李。
智はため息をつく。
(そんな可愛い顔されたら、何も言えない)
「またね、智」
「またね、桃李くん」
智と別れ、ウキウキと歩いていた桃李。
瞬間、視線を感じて振り向いた。
しかし、誰も桃李を見ていなかった。
相手も気付いて目線を外したのか…。
(……誰?今の…)
確かに感じた。
射すような視線を……。
智たちがレッスン室の扉を開けるとあんずが笑顔で迎えた。
「おかえり、智ちゃん」
あんずが智を抱き締める。
「あんずさん、どうして智に着ぐるみを?」
一緒に付いてきたゆうたが聞いた。
あんずは翠を見ながら言った。
「釣れるかなって思って」
翠は笑顔で、着ぐるみ姿の智の写真を何枚も撮っていた。
(……確かに釣れた)
全員、納得した。
1年を中心に着ぐるみの智の写真が拡がった。