5.「翠」と「スバル」
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高峯翠にとって智は不思議な存在だった。
転校初日に見せた、冷たい表情。
クラスメイトを完全に無視、そのまま不登校。
しかし、登校してからはあんずに付いてプロデューサーの仕事、葵兄弟に付いて部活見学を積極的にしていた。
そんな智の劇的な変化に最初、翠も周りも少し戸惑った。
2週間と経たないうちに彼女の恐い噂はデマだったと、消えてなくなった。
放課後。
「きゃあぁー!!」
バスケットコートに移動中の翠、スバル、真緒の耳にその叫び声が響いた。
「な、なんだ!?」
声がした方を見ると、此方に走ってくる生徒がいた。
「誰?」
「あ、智」
「あのこが噂の転校生?」
智は翠を見つけると、泣きそうな顔で真っ直ぐ来た。
「翠くん!助けて!」
そのままの勢いで翠に抱き着いた。あまりの衝撃に少しよろめく。
「ど、どうしたの?」
「あの…あ…うぅ」
智は震えていた。
スバルが智の肩に手をおいた。
「落ち着いて、ゆっくり話してごらん」
優しく言うと、智は頷いて一拍おいた。
「…ふ、噴水から手が…あんず先輩が落ちたぁ~!」
『ええ!?』
3人供驚き、顔色が変わった。
(……まさか)
噴水が見えてくると、あんずと奏汰がいた。
2人供、水に浸かったまま。
(…やっぱり)
あんずは智達に気づき、ゆっくりと立ち上がると男子の目など一切気にせず、スカートをギリギリまで上げて絞った。
長く水に浸かっていたらしく、水がザバァと大量に落ちた。
「あんず、大丈夫?」
「うん、ありがとう」
スバルの手を借りて噴水からあがったあんずに智は抱き着き、わんわん泣いた。
あんずは真緒からタオルを受け取ると先に智の顔をグシグシと拭いた。
「…うぅ……!」
智は落ち着いて、奏汰の存在に気づくとあんずから離れて翠の後ろに隠れる。
「あ、まだ…」
「あんずも拭かなきゃ!」
「ほら、ジッとしてろ」
あんずが智を追いかけようとしたら、スバルと真緒が止めた。
智が翠のシャツを握って離さないことに、翠は戸惑っていた。
他の生徒と比べると、翠は智とあまり話したことがなかった。
あいさつ程度で会話らしい会話は無いに等しい。
なので奏汰が3年生で、翠と同じ流星隊のメンバーであると説明したことが今までの最長かもしれない。
奏汰は智に興味津々で、
智はそんな奏汰に怯えて、
翠は間に立たされた。
(……最悪だ)
智を連れてバスケットコートに移動する時も奏汰はついてきた。
「…何でついて来るんですか?」
翠が奏汰に聞く。
「智とおはなしがしたいからです」
「………………」
智はずっと黙っている。
翠は改めて智を見た。
さらさらと流れる黒髪、泣いた為か目元を中心に少し赤い顔色。
白く、小さい手。
腕を掴まれた時、意外な力強さより指の細さに驚いた。
(……女の子、なんだよな)
「あ」
智がよろめいた。
翠は咄嗟に智の肩を掴んだ。
(細いなぁ)
小柄で、少し力を入れたら折れてしまいそうな細い体躯。
「ありがとう」
やっと笑顔になった智に、翠はほっとした。
「また明日ね、翠くん」
奏汰とあんずに連れられて、智はバスケットコートを去った。
「…………」
「どうしたの?サリー」
「…いや」
『またね、……ちゃん』
(何か、聞いたことがあるな…)
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