4.「なずな」と「奏汰」
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バスケットコート。
「…………」
「しゃべってくれませんねぇ」
智は奏汰に警戒していた。
ただでさえ制服で水に浸かっているだけでも奇怪だが、いきなりあんずを水の中に引きずりこんだのだ。
しかもその時、智の視界からは奏汰の腕しか見えなかった。
恐怖映像としか言い様がない。
あんずにかけようとした声が悲鳴に変わった。
あんずが無事だと解っても、奏汰が妖怪の類ではないと解っても、智は奏汰が怖かった。
ただ奏汰と目を合わせる。睨んでいるに近かった。
そらせば合わせようと追い掛けてくると解ったから。
「ぼくとおはなししてくれませんか?」
「…………」
「……みどりがじゃまですねぇ」
「!」
智は翠のシャツを強く握りしめ、涙目で翠を見上げる。
翠は戸惑う。
「にんぎょひめみたいですね。でもちがう」
奏汰がそう言うと、智はキョトンとした。
「智ははなせる。なのに、どうしてはなさないのですか?それと………あいたがってますよ」
「!」
智は一瞬驚き、キッと奏汰を睨んだ。
「あなたに何がわかる」
翠も驚く程、鋭い声で言った。
「ぼくは、なにもしりませんよ」
反対に奏汰の声優しかった。
智から離れる。
そしてニッコリした。
「かいようすいぶつぶにも、あそびにきてください。かわいいこがたくさんいますよ」
「……まだ続いてる」
ジャージに着替えたあんずが合流した。
「困ったなぁ」
「どうした?」
真緒が聞く。
「明日のレッスンは流星隊なの。だけど……」
「すっかり怯えてるな。あ、こっちに来る」
智が翠から離れてあんずに駆け寄る。
「あんず先輩、海洋生物部に行ってみたいです!」
智の瞳がキラキラと輝いていた。
「………何を言われたの?」
海洋生物部部室。
「わぁ!」
部室に入るなり、智は歓声をあげた。
「水族館みたい」
水槽内の生物を眺め、奏汰に次々と質問する。
奏汰はひとつひとつ丁寧に説明する。
それを見て、あんずは安心した。
(明日は大丈夫そうね)
しかしその後、翠から2人の会話を聞き、再び不安になった。
潮風が肌につく。
「流石にもう寒いな」
智は浜辺を歩いていた。さざ波と、サクサクと砂浜を歩く音だけがした。
「夏は賑やかだったな」
朝から合奏が響いていた。
それは智の家まで聞こえていたし、凄く気になっていた。
だけど、その時は家から出ることが出来なかった。
夜になっても合奏が聞こえて、カーテンの隙間から遠く、カラフルな照明が見えた。
とても綺麗で、行ってみることにした。
しかし、着いた時には何もなかった。
灯りが消えたステージ、キレイに片付けられたテーブルとイス。
セットがそのままで、お祭りはまだ続くと解っても、今の自分は見ることはできない。
キラキラ輝く素晴らしい世界など、自分はもう見れないと改めて知った。
心に空いた穴が広がった気がした。
その穴は今も空いたまま。
「よう!また会ったな」
「!」
目の前に人がいた。
人懐っこい笑顔。少し高めの声。
何度かこの場所で会っていた。
智はその人物に微笑む。
「こんばんは、レオ」
To be continued.
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