4.「なずな」と「奏汰」
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翌日の放課後、智とあんずは道場に行った。
昨日のお詫びと改めて見学させてほしい旨を伝えた。
紅郎は全く怒っていなかった。
むしろ緊張が原因であり、決して恐怖で気絶したわけではない、ということに安心していた。
(…良かったぁ、紅郎先輩、怒ってなくて)
あんずは中庭、噴水の縁に腰掛けた。
智は道場に残り、見学している。
そのまま裁縫を教えてもらえれば一石二鳥。
しかし………。
あんずはため息をついた。
「出来れば、空手部も避けたかったなぁ…」
またため息をついて空を見た。
すると突然、後ろから制服を引っ張られた。
「え?」
気づくと、水の中だった。
遠くから智の悲鳴が聞こえた。
(何が起きた?)
水から顔を出しても暫く呆然とする。
「あたまはひえましたかぁ?」
のんびりした口調が隣からした。
あんずはゆっくりと顔をそちらに向けた。
今の今まで、彼が、深海奏汰がそこにいたとは気づかなかった。
「…奏汰先輩」
「あんずは、なにをおそれているのですか?」
「…私が、ですか?」
あんずは考える。
確かにこわい。
知らないふりをして、あの人と接していることが。
智が避けていると、バレていることが。
智とあの人が再会した時のことが。
悩みが尽きない。
だから考える。
「だから、私はあのこを護る騎士になります。あの人を騙す道化になります」
あんずは真っ直ぐ、力強く言った。
「たよってほしいですねぇ~」
「その時はお願いします」
お互い、笑顔で言った。
「あんず先輩ー」
声の方を見ると、智がクラスメイトの翠の手を引いて走って来た。
「あんずー」
「スバルくん」
2人の後ろからスバルも追い掛けてきた。
「流星隊の3年生?」
智は翠の後ろに隠れながら、疑いながら奏汰を見た。
一方、奏汰は興味深げに智を見た。
奏汰が顔を近付ける程、智は距離をとる。翠のシャツを掴んだまま。
ゆえに翠は智に引っ張れてクルクル回ってしまう。
(うぅ…目が回る)
奏汰の肩を掴んで止める。
「ちょっと先輩、智が怖がってるじゃないですか」
「ぼくも智となかよくなりたいんですよ~」
3人の状況を真緒とスバルが見ていた。
「なんか、噂と全然違うな」
真緒はタオルであんずの髪をワシワシと拭く。あんずは大人しくされるがまま。
「ねぇ~、まさか最初に叫び声と泣き顔見るとは思わなかったよ」
「空耳じゃなかったのか」
智は翠を連れてきた時、泣きじゃくりながらあんずに抱きついた。
自分も濡れてしまうのもお構い無しに、あんずの存在を確かめるようにしがみつく。
皆より遅れて、真緒がタオルを持ってきた。
あんずはそれを受け取り、自身もくるまれながら、智の涙を拭った。
落ち着いた智は奏汰の存在に気付くと驚いて翠の後ろに隠れてしまった。
そして今の状況になる。
「こんなもんかな」
真緒はあんずの髪を拭く手を止めた。
髪はまだ濡れているが、水が落ちてくることはなくなった。
「早く着替えないと風邪ひくぞ」
「ありがとう」
あんずは智を翠達に任せ、着替えに行った。