3.「晃牙」と「創」
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レッスンを終えて智は創と帰路についた。
「今日は美味しいお茶とお菓子をありがとう。レッスンもちゃんと見れて勉強になったよ」
「それは良かったです」
プツン
パサッ
「あ」
智の長い髪が風にふかれてなびいた。
「髪紐切れちゃった」
髪をおさえる。
「わわっ、大丈夫ですか?」
「大丈夫、予備があるし」
予備のゴムで髪をまとめた。
創は智の髪紐を拾ってわたした。
「ありがとう」
「大事な物、なんですね」
智の髪紐はすっかり色褪せていて、いつ切れてもおかしくない状態だった。
「うん」
智の顔は笑顔だったが、どこか寂しげだった。
『髪が伸びたね』
優しい手が、指が髪に触れる。
『ねえ、後ろを向いて』
『?』
言われるまま、後ろを向く。
シュル
『できた!見て』
鏡に写ったのは、お菓子にラッピングされていたピンク色の細長い布製のリボン。
それが髪に結ばれていた。
『可愛い。ありがとう!』
笑顔が眩しかった。
以来、髪紐として使っていた。
智は切れた髪紐を握りしめた。
泣きそうになったが、創がいるので耐えた。
「珍しいな、零ちんの方から情報を欲しがるなんて」
なずなは零に呼ばれて、軽音部の部室に来ていた。
今、部室には2人しかいない。
「双子には聞いたのか?なんか探偵ごっこしてるみたいだけど」
「葵くん達よりは持っておるよ。智の過去のことも」
零の話を聞いて、なずなはニヤリとした。
「さすがだな。だけど残念」
肩をすくめる。
「俺達、放送委員は情報提供できない」
なずなの言葉に零は目を伏せる。
「……嬢ちゃんが口止めか?」
「ああ。でも多分、俺も零ちんも同じところで引っ掛かってる」
零となずなは同時に言った。
『何故、智は姿を消したのか?』
智は月を眺めながら、ブルーベリーマフィンを食べていた。
バターの香りにブルーベリーの酸味。
「………すっぱい」
そう呟いた。
智は掌にある髪紐を見る。
風がふいて、髪紐が空を舞う。
そして闇に消えた。
智はそれをただ見つめた。
無表情で。
冷たい瞳で。
To be continued.
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