3.「晃牙」と「創」
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ガタッ
『!』
全員、音の鳴った方を見る。
棺桶の蓋が少し浮いて、横にずれた。
「やっと起きやがった」
晃牙が立ち上がり棺桶に近付く。智はひなたに近寄って袖を掴む。
眼は棺桶を見つめている。
智は無意識だったが、ひなたには少し緊張しているように見えた。
「大丈夫、怖い人しゃないよ」
ひなたは笑顔で言う。
「……うん」
(サクマ……顔を見れば思い出すかもしれない)
晃牙が棺桶の中にいるらしき人に話しかけている。
すると中から白い手がすぅっと出てきた。棺桶の蓋の端を掴み、横にずらしていく。
ガタンッと蓋が傾いて倒れた。
やがて頭が、肩が少しずつ、ゆっくりと棺桶から起き上がってきた。
顔は俯いていてよく見えない。
(あの人が朔間零)
零は晃牙とまた二、三言葉を交わした後、智達の方を見た。
「お主が智か」
長い前髪から覗く赤い瞳。
「!」
智は立ち上がり、零に駆け寄った。
「あの、私のこと憶えていますか?」
『!?』
全員が驚いた。
零も目を見開いた。
お互い顔を近付けてマジマジと見た。
「……会ったかのう?」
零は首を傾げる。
「…多分」
智も首を傾げる。
零の顔を見ても、何も思い出せない。でも、頭の角で何かが引っ掛かった。
確かに知ってる。
会っている。
でもいつ?
どこで?
1年生を帰した後、晃牙と零は再び話した。
「何者なんだ?あいつ」
「さぁのう。此方も情報が足りぬから何とも言えん」
零は窓から月を眺めた。
(何処で会ったんだろう?)
智は暗い道を歩きながら考えていた。
服は制服ではなく、胸元に赤いリボンを飾ったブラウスを着ていた。
(もういいや、あの人とは関係なさそうだし)
智は思い出そうとすることを止めた。
公園のベンチに座る。
膝の上には1冊の本。
開くと所々ページが破けている。
ビリビリとページを破く。
破っては放る。
黙々と続ける。
時折、破いたページをジッと見る。
(あなたを愛してる)
クシャと紙を握りしめ、放った。
あの頃は、辞書を引いて調べることが楽しかった。
意味を理解した時は嬉しかった。
本当に感動した。
ビリ
(わたしを忘れてしまう)
クシャ
(幸せを永遠に壊した)
もう、あの頃の気持ちにはなれない。
「……知らないままが良かった」
智の頬を涙が伝った。
(あなたが嫌い)