3.「晃牙」と「創」
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バタバタと走り回る2つの足音が軽音部の部室に響き渡る。
「待ちやがれ!」
「イヤです!」
智が晃牙に追いかけられていた。
葵兄弟と智が軽音部の部室に着いた時、既に晃牙がいた。
【ひなたを泣かした転校生】に興味があった晃牙は智に近づいた。
しかし智は晃牙の顔を見た途端、カバンで自分の顔を隠した。
「?」
3人は一瞬キョトンとした。
晃牙が智に近付く。
その分智は後ろに下がる。
「オイッ!」
晃牙が声をあげると智は肩をびくつかせ、さらに下がった。
腕を伸ばして捕まえようとすると、かわした。
そこから追いかけっこが始まった。
最初は葵兄弟も晃牙を宥めたりしていた。
だが、朝から体調が万全ではなかった為、先にひなたが力尽き、ゆうたもそれに続いた。
2人は壁に背中を預け座り込み、完全に傍観者となった。
「智って以外と体力あるね」
「小回りもきくね」
智は晃牙の手をかわし室内をアチコチに逃げ回る。
いつの間にかカバンは部屋の角に投げ飛ばされていた。
「初対面で顔を隠すわ、カバン投げるわ、失礼だろ!」
「ごめんなさい!」
「とりあえず、止まれ!」
「イヤです!」
もうどちらかが止まらなければ終わらない。
「っ捕まえた!」
「きゃぁ!」
晃牙が智の腕を掴み、追いかけっこ終了。
2人供息が上がっていて、揃ってその場に座りこんだ。
「…おい、ゆうた」
晃牙が息を整えてゆうたを呼ぶ。
「何ですか?」
「こいつ、本当にひなたを泣かしたのか?全然、そうは見えねぇぞ」
ゆうたは首を傾げる。
「どうやったかは知りませんけど、アニキが泣いたのは本当です」
晃牙が智に向き直る。
「どうやった?教えろ!」
「……………」
智は顔をしかめ、プイッとそらした。
「っな!こっち向け!」
晃牙は智の肩を掴んで、自分の方を向かせようとした。
「あっ、先輩!智は女の子なんですから乱暴は駄目ですよ!」
ひなたが声をあげる。
「お前ら、これが女の子に見えるか?」
「………………」
ひなたとゆうたは黙った。
「ひなたくん?ゆうたくん?」
「っあ、えっと」
「ご、ごめん」
(別に良いけど)
智は晃牙の手を振り払う。
「先輩は何故そんな事を知りたいんですか?」
後輩の敵討ちには思えなかった。
智に真っ直ぐ見つめられて、晃牙は一瞬言葉を詰まらせた。
やがて、ニヤリと笑った。
「脅しのネタにする為だ」
『………最低だ』
葵兄弟と智の声が重なった。
「………相手にしなければ良いのです」
智は晃牙の問いに答えた。
「は?」
「初日、私はひなたくん達を全く相手にしませんでした」
話を聞いて晃牙が呆れ顔をしながらひなたを見た。
「お前そんなことで泣いたのか?」
「もうどうとでも言って下さい」
ひなた、消沈。
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