番外編3.party
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会場に向かう間、智ちゃんは震えていた。
腕に触れている私の手に微かに震えが伝わってくる。
(緊張、………いや、恐怖かな)
感受性豊かで、人一倍、空気に敏感な智ちゃん。
苦労も多かったと思う。
私は立ち止まり、その小さな身体を抱きしめた。
驚いた智ちゃんは身体をびくつかせたが、震えも止まった。
「大丈夫だよ」
智はコクリと頷いた。
私たちは再び歩きだした。
係の人が会場の扉を開けると中にいた人たちの視線が一斉に此方に向いた。
英智さんと智ちゃんに。
英智さんに案内されて何人かの大物らしき方々に挨拶した。
相手方は智ちゃんにエスコートされている私にも目を向ける。
「友人です」
簡単にそれだけ言った。
挨拶回りが一通り済んだ頃、会場の音楽が変わっていた。
(あ、この曲)
ダンスのレッスンで使った曲だった。
「踊ってきたら?」
英智さんが言った。
見ると会場の中心で何組が踊っていた。
大人の人だったり、私たちより少し年上の人たち。
とても輝いて見える。
あの中に入れと?
智ちゃんも疑わしげに英智さんを見る。
英智さんは笑顔のまま。
「このまま挨拶回りを続ける?」
ここまで沢山の方を挨拶した。
少し頭を整理したい。
「先輩、踊りましょう」
智ちゃんが言った。
智ちゃんのエスコートでぎごちないながらも踊った。
ダンスが終わるとまた挨拶回りをした。
挨拶ついでに相手の方とダンスをして、また違う人に挨拶をして、それを繰り返した。
挨拶回りを終えると私たちは飲物を持ってテラスに出た。
「………疲れた」
「………はい」
そう言いながらも智ちゃんはずっと英智を見ていた。
尊敬を込めた眼差しで。
「やっぱり英智は凄いな」
確かに。
沢山のお客様の相手をしながら、此方のフォローも忘れない。
「智!」
「お姉さま!」
桃李くんと司くんがきた。
今日、私たちが来ることは知っていた。
2人にダンスを教えてもらったから。
「挨拶回りは終わった?」
「うん」
智ちゃんがそうこたえると桃李くんはニッコリした。
4人でお喋りしていると、またダンスの曲が始まった。
「智、踊ろう」
桃李くんが智ちゃんに手を差し出した。
「良いよ」
2人は角の方で踊り始めた。
私も司くんと踊った。
パーティーはもうすぐ終わる。
そして『今夜限りの男の子』の智ちゃんも。
私たちは日常に戻る。
翌週。
智ちゃんの両親から
『ご令嬢のお見合い写真が届いたけど、パーティーで何をした?』
と連絡がきた。
END