風の声
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「そこの綺麗な狐さん」
「アタシのこと?」
嵐に声をかけてきたのは、可憐な少女。
「そう、あなた」
凜とした、強い生命力を感じる声。
「ねえ、私のものにならない?」
真っ直ぐな物言いについ契約しそうになった。
「断るわ」
「残念」
少女は肩をすくめるが、笑顔は崩さない。
「じゃあ、友になってよ。あなたとお近づきになりたいの」
どこまでも、真っ直ぐだった。
惹き付けられる。
自分の力に自覚があるのか、ないのか…。
「あなたは一体…」
「私はあんず。家はあそこ」
あんずが指差した家はこの辺りでは有名な術師の家だった。
(……なるほどね)
噂の力の強い術師だと思った。しかし、結界が張られていない。
力の制御ができているのだろうか。
「狐さん?」
あんずは首を傾げる。嵐の返事を待っている。
「名前くらい教えてよ。知ったからといって、それだけで支配する力は無いんだから」
「あら、そうなの?」
「だからそんなに警戒しないで。耳と尻尾が出てるよ」
嵐は驚いて耳を確認した。
人間の耳だった。
あんずがクスクス笑う。
「結界を張ってるのは妹のスモモなの」
「妹さん?」
「そう」
あんずは餡蜜の寒天をつつく。
「自分で結界を張れるようになるまで外に出られないの」
「そんなに強いの?」
「そう。出来れば、嵐ちゃんに会ってほしいの」
「何故?」
あんずは顔を伏せた。
「……あの子、式神の継承を済ました時に自分の力と結界の意味を知ってから、ずっと怯えているの」
「式神の継承?」
「うん。今は隠居してる祖父が造った式神、元々スモモに継承する為に造ったの。しかも2体」
嵐は目を丸くする。
「……まさか、2体同時に継承したんじゃ」
「そのまさか」
嵐は言葉を失った。
あんずの歳は13だという。弟がいて、その下にスモモがいる。
10になったかならないかの子どもが力の強い式神を2体同時に継承して平気でいるとは考えがたい。
「アタシは、スモモちゃんに会って何をすれば良いの?」
「スモモの話し相手になってほしいの。嵐ちゃんに影響がないように呪いはかけるから」
お願い、とあんずは頭を下げた。
「それで、会いに行くの?」
「あんなに強く言われちゃあね」
「ナッちゃんも物好き」
「凛月ちゃんも一緒に行く?」
凛月と呼ばれた鬼は顔をしかめた。
「絶対行かない!」