7.「幻想」と「忘却」
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水季は初め、千秋を嫌ってはいなかった。
水季が1年生の頃、初めてアイドル科に来た時、千秋が声をかけてきた。
「どうした?迷ったのか?」
「!」
声をかけられた水季は明らかに怯えた仕草、表情をしていた。
「ああ、恐くないぞ~」
千秋は笑顔でゆっくり近付いた。
「普通科の生徒だろう?」
水季は頷く。
「迷ったのか?」
今度は首を横に振る。
やっと口を開く。
「2年の天祥院英智に会いにきた。許可はもらってる」
何とか絞り出したような声音。
「ガ、ガーデンテラスに行きたい…です」
「それならそこを曲がって真っ直ぐだ」
「…………ありがとうございます」
水季はお礼を言い、ガーデンテラスに小走りで向かった。
水季が息を切らして現れたことに英智は驚いた。
「どうしたの?約束の時間はまだ……」
「ま……迷った!」
迷ったのは本当だった。
ガーデンテラスの場所は予め聞いていた。
しかし水季は目立っていた。
男子しかいない学科に女子がいる。
迷子と思い、生徒たちは声をかけた。
しかし、水季が天祥院英智の名前を出すと態度は一変した。
どこかどうと問われると答えづらいが、空気が変わった気がした。
水季はあれこれ理由をつけてその生徒たちから逃げた。
結果、迷った。
椅子に座ると水季は漸く落ち着いた。
「急に馴れ馴れしくなったと言うか、なんというか…」
ピリッとまた空気が変わった。
「何もされてない?」
英智が険しい顔で聞く。
「……さ、されてません」
水季がこたえると英智はため息をついた。
「やっぱり、此処で会うのはやめようか?」
英智は今度は心配そうな顔をした。
「良い案だと思ったけど、水季が危ない目に遭うなら…」
水季は怪訝な表情をする。
「貴方は何をやらかしたんですか?」
「普通に学生生活を楽しんでるよ」
「そうですか」
暫くアイドル科では「謎の令嬢」が噂になった。
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