5.「好意」と「休日」
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水季の様子がおかしいと、最初に気づいたのは創だった。
「どうかしましたか?」
「……ん?なんでもない」
そう言って創がいれた紅茶を飲む。
(やっぱり、おかしい)
いつもならお菓子にも手を伸ばす水季。
だが今日は紅茶一杯で帰ってしまった。
「創も気づいた?」
「桃李くんも?」
「うん」
「あら、どうしたの?」
「あんず。水季がね、なんかおかしいの」
…………
「ふーん、そうなの」
あんずの反応に2人はぽかんとした。
「それだけ!?」
「心配じゃないんですか!?」
「全然」
あんずはニッコリしながら言った。
「2人とも、次に水季ちゃんに会ったらね………」
…………
「あ!来ました!」
「よし!行くよ、創!」
創と桃李は水季に駆け寄る。
「水季!」
「水季さん!」
「桃李。創」
水季は2人に気づくと笑顔を向けた。
「水季さん、この間翠くんが…」
「あのね!翠がね…」
同時に喋り出す創と桃李。
水季は2人が可愛くて、クスクス笑った。
「どうした2人とも」
2人の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「桃李はいつもだが、今日は創もお喋りだな」
「え、えっと」
「まあ良い。で、翠がどうした?」
『水季ちゃんに翠くんの話をいっぱいしてあげて』
あんずは創と桃李にそう言った。
(ふう、こんなもんかな)
あんずはペンを置いた。
「ふむ」
書き上げた企画書を見直す。
「あんず!」
「あら桃李くん」
桃李はニコニコ顔であんずに駆け寄る。
「水季、元気になったみたい」
「あらそう」
あんずもニッコリする。
創と桃李から翠の話を沢山聞いた水季は上機嫌だった。
噴水に行くと目的の人物がいた。
「水季」
「久しぶりだな、深海殿」
奏汰は水に浮かんでいた。
水季は特に驚きもせず、奏汰と目を合わせる。
「助言を請いたい」
水季がそう言うと、奏汰は水から上がり、2人は噴水の縁に並んで座った。
「どうしましたか?」
奏汰が聞く。
だが水季はすぐには言わない。
どう言葉にしようか迷っているようだ。
奏汰は静かに待つ。
「わからないのだ」
水季が言った。
「傍にいるのが当たり前だったのに」
いつの間にか、笑顔は消えていた。
「変わらず過ごしてきたのに、落ち着かない」
ポツリポツリと話す。
「水季」
奏汰が呼ぶ。
水季は顔を上げ、奏汰を見る。
奏汰の水に濡れた髪が、肌が陽にあたり、キラキラと輝いていた。
奏汰は優しい笑みを浮かべていた。
水季は泣きそうになった。
奏汰には誰にも言えないことが言える。
創や桃李、あんずからアイドル科にいる時の翠の話を聞く度感じた。
最初は嬉しくても、後から辛くなる。
「翠の傍にいたいのに」
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