2.「甘味」と「嫌悪」
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「水季!」
喫茶店の扉を開けると同時に翠は叫んだ。
「おお、翠」
水季は嬉しそうに言う。
一方翠は怒りを顕にしながら水季のいる席に近付く。
数ヶ月前と同じ流れ。
ただ違うのは
「今度は智を連れ出して!何やってるの!」
水季の向かいに座っていたのは智。
「しかもあんず先輩の時と同じ文章まで送ってきて!」
『智を預かる。智の荷物を持ってこい』
あんずを連れ去った時も水季は同じ文章を翠に送った。
「翠が付き合ってくれんのだから仕方なかろう。それに、智とゆっくり話しもしたかったしのう」
「智、帰るよ」
翠が言う。
「何だ、学院に戻るのか?」
水季はつまらなそうに言う。
「……まだ準備がありますから、すみません」
智も申し訳なさそうに言う。
「仕方ないか」
水季も席を立つ。
会計をして店を出る。
「ごちそうさまでした、水季さん」
智はぺこりと頭を下げる。
「またな、智」
水季は商店街の方に歩いて行った。
「はぁ~」
翠はため息をついた。
「えっと……ごめんね、翠くん」
「智は悪くないよ」
「………」
智は翠の横顔を見上げた。
翠は水季の後ろ姿でじっと見ていた。
その表情はまるで……。
ハロウィン前夜。
##NAME1##は自宅で英智と電話で話していた。
「天祥院殿、もう一度言ってくれぬか?」
『明日、水季の所に行きたいって人が…』
「…断りたい」
思わず本音が出た。
『珍しいね、君がそんなことを言うなんて』
「明日はハロウィンだろ?」
『そうだね』
「面倒な手続きをせずにアイドル科に入れる日ではないか」
電話の向こうで英智は笑う。
『楽しみにしてたんだ』
「そうだ!」
水季は正直に言う。
「して、相手は誰だ?何処かの令嬢か?」
『水季』
突然、英智の声が真剣になった。
「なんだ?」
『断ることもできるんだよ』
「それを断る」
水季は即答した。
「天祥院殿を頼るのだ。余程のことなのだろう」
水季は冷蔵庫を開ける。
中を見渡して閉める。
「役目は果たすさ」
『……役目か』
どこか重く感じた英智の声を消すように水季はそっと息を吐いた。
「では天祥院殿、明日は仮装したあんずと智の写真を頼むぞ」
明るい声でそう言うと水季は電話を切った。
再び冷蔵庫を開け、ため息をつく。
「…………甘味を切らしてしまった」
甘味が欲しい。
しかし、出歩くには遅い時間。
水季は葛藤した結果、靴をはき、近所のコンビニに向かった。
お菓子を買い、帰路の途中、水季は夜空を見た。
「最近、雨が降らんのう」
季節的に雨天は少なくない。
(今年は雨が少ない、まとまった降りは梅雨ぐらいか)
予報では暫く晴天。
日中は気温も上がる。
(……明日以降、考えるとしよう)
水季が家に帰ると仕事から帰ってきた両親に怒られた。
客に出すお菓子を買いに行った(半分事実)と言ったら
『連絡くれたら買ってきた』
とさらに怒られた。
2日後。
夢ノ咲学院、生徒会室。
「どういうことだ、天祥院殿」
「ごめんね、水季」
水季が英智に詰め寄っていた。
一方、英智はニコニコと笑顔だった。
「っわ!水季、何してるの!?」
生徒会室に入ってきた桃李が水季を止める。
「おぅ!」
引っ張られて水季は驚くが、桃李の方を向いて抱き締めた。
「桃李~、天祥院殿が酷いのだ~」
「水季の方が酷いことしてたように見えたけど」
「…むぅ、桃李まで冷たいのう」
水季は桃李から離れた。
「桃李、あんずとは仲良くしているか?」
「うん!」
「智とは?」
「……うん」
水季の問いかけに桃李は目をそらしながら応えた。
微かに頬が赤い。
(ほほう)
水季は察した。
にっこりと桃李に微笑みかける。
「桃李、頼みがある」
「?」
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