9.「夢の中」と「夕立切」
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水季の祖母side
『あんたは少々ヤンチャやなぁ。賢いんやさかい、爪は隠しとき』
実の親からの愛情も薄かった幼少期。
優しい声をかけてくれるのは祖母だけだった。
勉強も遊びも祖母が見てくれた。
『いつか絶対役にたつ』
と祖母の実家の武術も叩き込まれた。
実際、最初の夫を家から叩き出すのに役にたった。
それから奥ゆかしさ、淑やかな演技は止めた。
本当の自分を出しても問題ない程に味方は作った。
『爪を出す時はタイミングが大事や。後はどうにかなる』
元夫の実家に離縁を申し立て、向こうは承諾した。
此方の行動に尾びれがついて、すっかり委縮させてしまったが仕方がない。
両親は『育て方を間違えた』と言ったが、私を育てたのは祖母だ。
『家を、血を存続させたいのなら、癖の悪い人は論外です』
両親共に愛人がいるのは知っていた。
祖父母は本当に仲が良かっただけにこの事実には驚いた。
私は両親よりも祖父母に憧れた。
次の夫は普通の人だった。
『名家』にしがみついてる者から見れば、庶民だった。
買い物中いきなり
『あ、貴女にはこの色が似合います!』
そう言って贈られた簪。
自分では選ばない色の飾り。
簪に合わせて着物を選んで会いに行ったら、彼は喜んでくれた。
それだけで充分だった。
両親は良家から話が来てると言ったが、私は彼が良かった。
彼以外ありえなかった。
『天祥院の当主の許しが得られれば』
それが条件だった。
当時の天祥院の当主は大笑いした。
元夫を叩き出した話を聞いた時と同じように。
『好きにすれば良い』
既に味方だったことは、両親は知らない。
それからは驚く程、自分にとっては幸せな年月だった。
そして、息子が「結婚したい」という女性を連れてきた。
見た目も雰囲気も強い人だった。
仕事にやりがい、誇りを持っていて、結婚後も続けたいと言った。
それを取り上げてはいけないと思った。
もう『女だから』『結婚したから』と言う時代ではない。
息子を愛しているのは本当だし、『名家』なんて、もう形だけの家だし。
親族が何か言ってきてもこちらで何とかなる。
この人が、その子供が、この家に新しい風を運んでくれる。
だから水季が生まれるまで黙っていた。
この家で銀髪の者の本当の役割を。
水季の母は驚いた表情をして、水季を抱きしめた。
「全て水季が自分で決めて良いのよ」
もう親が、他人が決めなくて良い。
『家』に閉じ込めなくて良い。
自由に外に出て良い。
自分の時とは時代が、状況が違う。
水季の人生を邪魔する存在はいないのだから。
けれど、時代が変わるというのは人の認識も変わるというもの。
昔は崇められていたが、今は気味悪がられた。
幼い水季は傷ついた。
私と違って、とても傷つきやすかった。
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