向こう岸のアルタイル
走る景色の中
見たものは
陽炎だったか
夏が近い。
もうすぐ
年に一度のあの日だよと
思い出させるように
あの人から便りが届く
あのころ
何度も何度も渡った橋を
閉鎖したはずの橋を
私はまた渡ろうとしている
恋心なのか
欲情なのか
ただ
沸き立つそれを
抑えることができない
水が流れるのを見るたびに
共に流してきた
あの人への想いが
まだこんなにも遺っていたなんて。
川の向こう側
あの人が手を振る
高揚する胸と
紅葉する頬
手を伸ばしかけたそのとき
あの人は背を向け
ごめんね、と
立ち去ったんだ
笑顔ひとつ残さずに。
煌びやかで、美しい
この川に
もういちど想いを流そうか
流せるものなら
すべて
流れてしまえば。
(そう、待つことから、寂しさから、
逃げたのは 、私)
雨が私を嘲笑う
去年も
おととしも
晴れれば橋は架かるのだと
信じたままでいたかった。
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