入学~
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全ては円環に繋がっている。
始まりはどんなに高潔であったとしても、その切欠が人であるならば、多少の自己保身はついて回って、いつしかその高尚さをエゴに変えてしまうのだ。
憧れも、愛も、欲望も、その須くは執着という言葉へと帰してしまう。
そのことを、私はよく知っていた。
知ろうとしなくても、知りたくなくても、家族という枠組みにいるうちは、私がその真実から解放されることはない。
解放されたとて、自由に生きるなんてできやしないのに。
◾︎
濃紺の夜に朝焼けの橙が混じる頃。
遠くで鳴く鳥の囀りで目を覚ます。
上体を起こしてしばらくぼんやりと覚醒を待ちながら、壁に掛かった時計を見た。
時刻は朝の四時。
15歳とまだ若い者が起きるには随分と早い時間だ。
と言っても昨晩は9時ごろに床についたので睡眠時間はしっかりと取っている。
未だに怠さの残る身体を叱咤してなんとか立ち上がって障子を開けた。
まだか細い朝陽が心地良い。
よく手入れされた庭が朝の静けさによく似合っていた。
家の者はまだ誰も起きていないだろう。
なるべく物音を立てないようにしながら着替える。
特に父は職業柄か物音や人の気配に敏感だ。
昨日も夜遅くまで見回りをしていただろうから起こして疲労を溜めさせたくはない。
昨今中々目にかかることのないこの上等な日本家屋が私が生まれ育った家である。
部屋数は十を超え、廊下も大柄な父が両手を広げてもまだ余裕がある程に幅があり、旅館を営んでも問題が無いくらいに広々とした建物だ。
だがここに住むのは私を含めて四人。
共に住んでいた四つ歳上の兄はちょうど一ヶ月前、大学進学を機に家を出て行ってしまった。
大きすぎる家に、静かな家族。
ひんやりとどこか底冷えのする静けさは、何も朝だからというだけではない。
この家はいつだって一線を引いた疎外感で満たされている。
スニーカーを履き、イヤホンをつけて玄関を出る。
もうかれこれ三年は続けている朝の日課。
家の中とはまた違った静寂が心地よくて、どこか逃げるように始めた朝のランニングはいつしか習慣づいてしまっていた。
ちょうど日が昇り始める時間帯に外を出歩く者は少なく、私以外だと新聞配達の人くらいとしかすれ違うことはない。
普段は何も考えずに生活しているからか、取り止めのない思考がふって湧いては消えていく。
まあ考えることといっても家族のことばかりだ。
双子の弟と、姉と兄と母と、そして父。
父と言っても、きっとあの人を父と慕っているのは家族の中でも私だけなのだろう。
近寄りがたく、確かに実力はあるけれど強さのみを追いかけて家族を顧みないその生き方は、身内からすれば確かに自分達が望む父親像からは遠くかけ離れている。
それでも、私は父が好きだった。
一時間ほど走ってから家に帰る。
春も初めだがまだ肌寒い日が多いので大丈夫かと思っていたが、予想以上に汗をかいてしまった。
シャワーを浴びなければならないな、と思いながらスニーカーを脱ごうと玄関口にしゃがみ込む。
ふと、足元が視界が薄暗くなってちらりと前を向けば誰かの足が見えた。
それに嬉しくなって、私はにっこりと笑顔を浮かべ顔を上げる。
「おはようお父さん」
「…ああ」
相変わらずの仏頂面をした父がそこで仁王立ちしていた。
起きたのはついさっきだろうに、既に着替えて手荷物を片手に持っている。
もう仕事に行くらしかった。
「今からお仕事?今日は随分早いんだね」
「ああ」
「お父さんのことだから心配無いだろうけど怪我しないでね」
「誰に物を言っている」
「うーん、私の家族に、かな」
ふん、といやそうに鼻を鳴らして父はしゃがんで靴を履きはじめた。
私がこうして家族として接する度に、父はいつも眉間の皺をさらに深くする。
どう返したらいいのか分からないのだろうか。
邪魔にならないようさっさとスニーカーを脱いで靴箱に入れる。
そして玄関扉を開けて出て行こうとする父の背中に声をかけた。
「行ってらっしゃい、お父さん」
「ああ」
「…どうしたの?」
返事は返したものの一向に動かない父を怪訝に思って聞くと、父は顔だけ振り返って今日初めて私を見た。
そのことにほんの少し驚く。
こうして私と顔を向き合わせるのはいつぶりだろうか。
父は染みついたように下がった口角のまま、こう言った。
「今日は雄英の入学式だろう。焦凍に無様な姿は晒すなと言っておけ」
「…うん、分かった。伝えとくよ」
それだけ言って父は家を出ていった。
ピシャンと閉じられたきり、また静まり返った空間で一人その閉じられた扉を見つめる。
——お父さん、私も入学するんだよ。
その言葉を口に出すなんてことは出来なかった。
お父さんは私の双子の弟を大事にしていて、そして、私のことはあまり好きじゃないらしい。
こうした遠回しの無いもの扱いはよくあることだ。
きっとその理由の一つだろう髪先を指で弄って、ふふ、と一つ笑う。
それでも父のことを嫌いになんて、到底なれそうもなかった。
◾︎
「凍華」
「どうしたの焦凍」
シャワーを浴びて髪も乾かして、自室で肌の保湿をしていると、ぽすんと軽く叩く音がして襖
が開く。
そこにいたのは双子の弟たる焦凍で、あまり変わらないその表情は心なしか困ったように眉が下がっていた。
雄英高校のシャツとスラックスに身を包んだ彼はそっとネクタイを差し出す。
それにああ、と納得したように声を上げた。
「ネクタイの結び方が分かんねえ」
「前は学ランだったしね。しょうがないよ。ほらこっち来て」
「ん」
寝起きなのかぼんやりとした様子で焦凍は胸元を見せる。
ネクタイを結んでやりながら凍華は、シャツ越しに触れたその胸板の厚さに内心ため息をついた。
同時に生まれ落ちいつも共に人生を歩んできた片割れは、いつしか自分の背を追い越し、力も強くなって、体も逞しい男のそれになりつつある。
悲しくはない。
いっそ喜びすら感じるものの、一抹の寂しさを覚えるのは致し方ないことなのだろう。
ネクタイを結び終えて、ポンとその胸板を軽く叩いた。
「はい、できたよ」
「わりぃ。助かった」
「気にしなくていいよ。でもちゃんと一人で結べるようにならなくちゃね。高校生になるんだし」
「ああ」
「あ、そういえばお父さんが頑張れって言ってたよ」
部屋を出ようとする焦凍に向かって思い出したように朝の父の言葉を告げる。
正確には『無様を晒すな』だったわけだが、遠回しに言えば『頑張れ』とそう大差はないので良かろう。
凍華の言葉を聞いた焦凍はそれ以上ないほど嫌そうに顔を歪めた。
「あの野郎…」
「こら、お父さんに向かって野郎なんて言っちゃだめだよ」
「あんなやつ、親だと思ったことない」
「もう。またそんなこと言って。…でもまあしょうがないか」
いつものことだ。
凍華が父を慕う一方で、焦凍は父に負の感情全てを向けている。
共に育ってきた身としてはその気持ちは痛いほど分かるのであまり口うるさくは言わない。
なに、焦凍が憎しみを向ける分、自分が愛情を向ければいい話なのだから。
「時間も時間だから準備しなくちゃ。着替えたいから、ほら、部屋出てって」
「…」
「焦凍?どうしたの?」
部屋を出ていくように促しても、じっとこちらを見つめて一向に出ていかない焦凍に凍華は眉を顰める。
普段聞き分けは良い弟なので、こういったことは珍しい。
「凍華は、」
「ん?」
「凍華は、いつも親父を庇うよな。なんでだ」
「なんでって…。お父さんだし…」
「なんであいつを『お父さん』なんて呼んで慕うんだ。凍華だってあいつのことで沢山苦しんできただろう」
「そうは言ってもなあ」
凍華は少し困ってしまった。
常日頃から自分が父を家族として扱うことに焦凍が不満を感じていたことは知っていたが、こうして真っ向から聞かれたのは初めてだ。
それに、理由を説明しようにも自分でもなぜあの人を家族として大切にできるのか、自分でもよく分からない。
しかし、それを言ったところで目の前の弟が納得しようはずもないのでどう言えばいいのだろう。
凍華が困っているのを察したのか、焦凍は額に手を当て落ち着くように深く息を吐いた。
「わりぃ。困らせたい訳じゃなかった」
「うん。私も上手く言えなくてごめんね」
「お前が謝ることじゃねえだろ」
「でも焦凍の気持ちを考えたらちょっとね。申し訳ないよ」
「別に、そんなこと気にすんな。双子なんだから」
焦凍は凍華の腕を引っ張って、ぐっと抱き寄せた。
これは二人の間で暗黙の了解のようなもので、片方が不安になったり困ったりしたらよくお互いを抱きしめ合うのだ。
頭ひとつ分背の高い焦凍相手だと、凍華の顔は肩の高さとそう変わらない。
そこに頭を預けて焦凍の心音を聞く。
自分よりも体温の高い彼は、脈打つ音もほんの少し凍華より早かった。
「俺は、必ずヒーローになって…。お前を守るから」
「ふふ。焦凍ったら。私もヒーローになるんだよ?守られる側じゃなくて守る側になるのは私も同じ」
「そうだったな」
可愛くて愛しい私の片割れ。
考えも個性も性別も。全て真逆だけどお互いを大切に思う気持ちだけはずっと変わらないでいたらいい。
そう思いつつ、凍華も焦凍の背に腕を回した。
始まりはどんなに高潔であったとしても、その切欠が人であるならば、多少の自己保身はついて回って、いつしかその高尚さをエゴに変えてしまうのだ。
憧れも、愛も、欲望も、その須くは執着という言葉へと帰してしまう。
そのことを、私はよく知っていた。
知ろうとしなくても、知りたくなくても、家族という枠組みにいるうちは、私がその真実から解放されることはない。
解放されたとて、自由に生きるなんてできやしないのに。
◾︎
濃紺の夜に朝焼けの橙が混じる頃。
遠くで鳴く鳥の囀りで目を覚ます。
上体を起こしてしばらくぼんやりと覚醒を待ちながら、壁に掛かった時計を見た。
時刻は朝の四時。
15歳とまだ若い者が起きるには随分と早い時間だ。
と言っても昨晩は9時ごろに床についたので睡眠時間はしっかりと取っている。
未だに怠さの残る身体を叱咤してなんとか立ち上がって障子を開けた。
まだか細い朝陽が心地良い。
よく手入れされた庭が朝の静けさによく似合っていた。
家の者はまだ誰も起きていないだろう。
なるべく物音を立てないようにしながら着替える。
特に父は職業柄か物音や人の気配に敏感だ。
昨日も夜遅くまで見回りをしていただろうから起こして疲労を溜めさせたくはない。
昨今中々目にかかることのないこの上等な日本家屋が私が生まれ育った家である。
部屋数は十を超え、廊下も大柄な父が両手を広げてもまだ余裕がある程に幅があり、旅館を営んでも問題が無いくらいに広々とした建物だ。
だがここに住むのは私を含めて四人。
共に住んでいた四つ歳上の兄はちょうど一ヶ月前、大学進学を機に家を出て行ってしまった。
大きすぎる家に、静かな家族。
ひんやりとどこか底冷えのする静けさは、何も朝だからというだけではない。
この家はいつだって一線を引いた疎外感で満たされている。
スニーカーを履き、イヤホンをつけて玄関を出る。
もうかれこれ三年は続けている朝の日課。
家の中とはまた違った静寂が心地よくて、どこか逃げるように始めた朝のランニングはいつしか習慣づいてしまっていた。
ちょうど日が昇り始める時間帯に外を出歩く者は少なく、私以外だと新聞配達の人くらいとしかすれ違うことはない。
普段は何も考えずに生活しているからか、取り止めのない思考がふって湧いては消えていく。
まあ考えることといっても家族のことばかりだ。
双子の弟と、姉と兄と母と、そして父。
父と言っても、きっとあの人を父と慕っているのは家族の中でも私だけなのだろう。
近寄りがたく、確かに実力はあるけれど強さのみを追いかけて家族を顧みないその生き方は、身内からすれば確かに自分達が望む父親像からは遠くかけ離れている。
それでも、私は父が好きだった。
一時間ほど走ってから家に帰る。
春も初めだがまだ肌寒い日が多いので大丈夫かと思っていたが、予想以上に汗をかいてしまった。
シャワーを浴びなければならないな、と思いながらスニーカーを脱ごうと玄関口にしゃがみ込む。
ふと、足元が視界が薄暗くなってちらりと前を向けば誰かの足が見えた。
それに嬉しくなって、私はにっこりと笑顔を浮かべ顔を上げる。
「おはようお父さん」
「…ああ」
相変わらずの仏頂面をした父がそこで仁王立ちしていた。
起きたのはついさっきだろうに、既に着替えて手荷物を片手に持っている。
もう仕事に行くらしかった。
「今からお仕事?今日は随分早いんだね」
「ああ」
「お父さんのことだから心配無いだろうけど怪我しないでね」
「誰に物を言っている」
「うーん、私の家族に、かな」
ふん、といやそうに鼻を鳴らして父はしゃがんで靴を履きはじめた。
私がこうして家族として接する度に、父はいつも眉間の皺をさらに深くする。
どう返したらいいのか分からないのだろうか。
邪魔にならないようさっさとスニーカーを脱いで靴箱に入れる。
そして玄関扉を開けて出て行こうとする父の背中に声をかけた。
「行ってらっしゃい、お父さん」
「ああ」
「…どうしたの?」
返事は返したものの一向に動かない父を怪訝に思って聞くと、父は顔だけ振り返って今日初めて私を見た。
そのことにほんの少し驚く。
こうして私と顔を向き合わせるのはいつぶりだろうか。
父は染みついたように下がった口角のまま、こう言った。
「今日は雄英の入学式だろう。焦凍に無様な姿は晒すなと言っておけ」
「…うん、分かった。伝えとくよ」
それだけ言って父は家を出ていった。
ピシャンと閉じられたきり、また静まり返った空間で一人その閉じられた扉を見つめる。
——お父さん、私も入学するんだよ。
その言葉を口に出すなんてことは出来なかった。
お父さんは私の双子の弟を大事にしていて、そして、私のことはあまり好きじゃないらしい。
こうした遠回しの無いもの扱いはよくあることだ。
きっとその理由の一つだろう髪先を指で弄って、ふふ、と一つ笑う。
それでも父のことを嫌いになんて、到底なれそうもなかった。
◾︎
「凍華」
「どうしたの焦凍」
シャワーを浴びて髪も乾かして、自室で肌の保湿をしていると、ぽすんと軽く叩く音がして襖
が開く。
そこにいたのは双子の弟たる焦凍で、あまり変わらないその表情は心なしか困ったように眉が下がっていた。
雄英高校のシャツとスラックスに身を包んだ彼はそっとネクタイを差し出す。
それにああ、と納得したように声を上げた。
「ネクタイの結び方が分かんねえ」
「前は学ランだったしね。しょうがないよ。ほらこっち来て」
「ん」
寝起きなのかぼんやりとした様子で焦凍は胸元を見せる。
ネクタイを結んでやりながら凍華は、シャツ越しに触れたその胸板の厚さに内心ため息をついた。
同時に生まれ落ちいつも共に人生を歩んできた片割れは、いつしか自分の背を追い越し、力も強くなって、体も逞しい男のそれになりつつある。
悲しくはない。
いっそ喜びすら感じるものの、一抹の寂しさを覚えるのは致し方ないことなのだろう。
ネクタイを結び終えて、ポンとその胸板を軽く叩いた。
「はい、できたよ」
「わりぃ。助かった」
「気にしなくていいよ。でもちゃんと一人で結べるようにならなくちゃね。高校生になるんだし」
「ああ」
「あ、そういえばお父さんが頑張れって言ってたよ」
部屋を出ようとする焦凍に向かって思い出したように朝の父の言葉を告げる。
正確には『無様を晒すな』だったわけだが、遠回しに言えば『頑張れ』とそう大差はないので良かろう。
凍華の言葉を聞いた焦凍はそれ以上ないほど嫌そうに顔を歪めた。
「あの野郎…」
「こら、お父さんに向かって野郎なんて言っちゃだめだよ」
「あんなやつ、親だと思ったことない」
「もう。またそんなこと言って。…でもまあしょうがないか」
いつものことだ。
凍華が父を慕う一方で、焦凍は父に負の感情全てを向けている。
共に育ってきた身としてはその気持ちは痛いほど分かるのであまり口うるさくは言わない。
なに、焦凍が憎しみを向ける分、自分が愛情を向ければいい話なのだから。
「時間も時間だから準備しなくちゃ。着替えたいから、ほら、部屋出てって」
「…」
「焦凍?どうしたの?」
部屋を出ていくように促しても、じっとこちらを見つめて一向に出ていかない焦凍に凍華は眉を顰める。
普段聞き分けは良い弟なので、こういったことは珍しい。
「凍華は、」
「ん?」
「凍華は、いつも親父を庇うよな。なんでだ」
「なんでって…。お父さんだし…」
「なんであいつを『お父さん』なんて呼んで慕うんだ。凍華だってあいつのことで沢山苦しんできただろう」
「そうは言ってもなあ」
凍華は少し困ってしまった。
常日頃から自分が父を家族として扱うことに焦凍が不満を感じていたことは知っていたが、こうして真っ向から聞かれたのは初めてだ。
それに、理由を説明しようにも自分でもなぜあの人を家族として大切にできるのか、自分でもよく分からない。
しかし、それを言ったところで目の前の弟が納得しようはずもないのでどう言えばいいのだろう。
凍華が困っているのを察したのか、焦凍は額に手を当て落ち着くように深く息を吐いた。
「わりぃ。困らせたい訳じゃなかった」
「うん。私も上手く言えなくてごめんね」
「お前が謝ることじゃねえだろ」
「でも焦凍の気持ちを考えたらちょっとね。申し訳ないよ」
「別に、そんなこと気にすんな。双子なんだから」
焦凍は凍華の腕を引っ張って、ぐっと抱き寄せた。
これは二人の間で暗黙の了解のようなもので、片方が不安になったり困ったりしたらよくお互いを抱きしめ合うのだ。
頭ひとつ分背の高い焦凍相手だと、凍華の顔は肩の高さとそう変わらない。
そこに頭を預けて焦凍の心音を聞く。
自分よりも体温の高い彼は、脈打つ音もほんの少し凍華より早かった。
「俺は、必ずヒーローになって…。お前を守るから」
「ふふ。焦凍ったら。私もヒーローになるんだよ?守られる側じゃなくて守る側になるのは私も同じ」
「そうだったな」
可愛くて愛しい私の片割れ。
考えも個性も性別も。全て真逆だけどお互いを大切に思う気持ちだけはずっと変わらないでいたらいい。
そう思いつつ、凍華も焦凍の背に腕を回した。
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