外国名の方が話の都合上良いかと思います。
タンザナイトの見る先
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コラソンことロシナンテは自分の隣に座っている女をご飯をかき込みながら横目でちらりと盗み見た。
彼女の白くきめ細やかな肌は間近で見ても毛穴ひとつ見当たらない。
緩やかにカーブを描いた鼻筋をしているが、鼻先はつんと丸くなって最後まで人形じみていないのが余計庇護欲を煽る。
潤った唇は何も塗っていないはずなのに薔薇色に淡く色づいていて、そこへ食べ物を取り込んで咀嚼しているのが嘘みたいだった。
どこもかしこも一級の美術品のように整っているのに微笑みは人間味に溢れていて、側に寄ると柔らかくて懐かしいような優しい匂いがするから、ロシナンテはこの女が少しだけ苦手だった。
ドフィがこの女をいきなり連れてきてはファミリーにしたのも分かる。
この女は自分たち兄弟の幸福の象徴だ。
美しく、清らかで、華々しく、暖かい。
そんなことは許されないとわかっているはずなのに、時間が許すまで彼女の側にいたいとさえ思ってしまうから、だからロシナンテはこの女、ヴィルが苦手だった。
銀食器で器用に、そして上品に料理を切り分けて小さな口へ運んでいく様は誰がどう見たって特級階級の生まれだろう。
海軍としての自分がヴィルをドフラミンゴの元から逃して、そして保護してやるべきだとは分かっていたが、遅すぎた。
ヴィルは、もう人を殺してしまっている。
彼女のタンザナイトの瞳は表面上はきらきらと純朴に輝いてはいるが、その奥ではどろどろとしたどす黒い欲望が渦巻いてヘドロのように粘着していた。
そのほとんどは執着となってドフラミンゴへ向かっている。
ヴィルのこれまでの経歴も能力も、ドフラミンゴを除いたファミリーは誰一人として知らない。
共に取引に出向いていたトレーボルならば何か知っているだろうと他のファミリーが聞き出そうとしていたが、すっぽりと抜け落ちたようにヴィルと出会った直後の記憶がないらしい。
もしかすると記憶を操作する系統の能力者かもしれない。
そのこともあって幹部の誰もがヴィルを警戒したが、彼女がファミリーに入って三ヶ月近くも経った今、警戒する者はもうほとんどいなくなっていた。
正直言って異常だ。
この海賊団の幹部は船長であるドフラミンゴのことを神か何かのように心酔している。
そんな彼らが、記憶を操作する力を持っているかもしれないヴィルのことを、彼女がドフラミンゴの記憶を操作した可能性を見落とすなんてあるはずがないのだ。
たった数ヶ月でこんなにも馴染んでしまうことに違和感を感じないなんて、あるはずがない、あってはならない。
ロシナンテは分かっている。
ヴィルのことをいくら苦手だと言っても、それが所詮は虚勢だと分かっているのだ。
彼女を前にすると、どうしようもない郷愁と慈愛と憐憫が心の中でごちゃ混ぜになって、優しく抱きしめたくなるような感情が身体を支配する。
目を合わせる度に魅了されていく。それが酷く恐ろしいことだと分かっているはずなのに、彼女の庇護下にいるのが堪らなく心地いい。
小さなステーキを食べ終えたヴィルは次に何を食べようかとテーブルの上を見渡し、どうやら生クリームと大粒のイチゴが乗ったショートケーキに目をつけたようだった。
しかしケーキはヴィルからは結構遠くに置いてあり、小柄な彼女には届きそうもない。
それに気づいたロシナンテは代わりにケーキを一切れ取ってヴィルに渡してやる。
三メートル近くある巨体は、その身長に比例するように腕も長く、楽に取ることができた。
少しきょとんとした顔をした後、ヴィルは花が綻ぶように笑って礼を言う。
「ありがとう。コラソン」
その笑顔に思わずこちらも微笑み「どういたしまして」と言いそうになるのを飲み込んで、無表情のままロシナンテは食後の紅茶を啜った。
そして次の瞬間吹き出す。
いつも通り、ロシナンテはドジって淹れたての熱い紅茶を冷ますことなく飲み込んでそのあまりの熱さに吹き出してしまったのだった。
吹き出された紅茶はそのままテーブルを濡らそうとしたが、そのまま空中で時間停止したように一瞬止まった後に元のティーカップへと一人でに戻っていく。
「まあ、コラソン。ちゃんと冷ましてからのまなくちゃ」
隣を見ればヴィルがくすくすと笑いながら、人差し指を空中で動かしていた。
どうやら今のは彼女が能力か何かを使って起こした現象らしい。
今度はロシナンテが唖然とした顔になって、会釈をするようにして頭を下げて感謝の意を伝える。
同じ食卓についた幹部たちが微笑ましそうに笑って、これで安心してドジれるじゃねえか良かったな、なんて言ってくる。
ドフィもいつもみたいに声を出すような笑い方ではなく、そっと微笑むようにして何も言わずヴィルとロシナンテを見つめていた。
微笑ましく笑う幹部たちに、優しく世話を焼いてくれる美しい女と、大切なものを見るような目で見てくる実兄。
ロシナンテはそんなことがあるわけないのに、自分が絵に描いたような幸せな家族の一人になったような気がしてしまう。
思わず流れ出しそうになる涙が視界を潤ませて、それを誤魔化すようにロシナンテは少し冷めた紅茶を一気に飲み干した。
彼女の白くきめ細やかな肌は間近で見ても毛穴ひとつ見当たらない。
緩やかにカーブを描いた鼻筋をしているが、鼻先はつんと丸くなって最後まで人形じみていないのが余計庇護欲を煽る。
潤った唇は何も塗っていないはずなのに薔薇色に淡く色づいていて、そこへ食べ物を取り込んで咀嚼しているのが嘘みたいだった。
どこもかしこも一級の美術品のように整っているのに微笑みは人間味に溢れていて、側に寄ると柔らかくて懐かしいような優しい匂いがするから、ロシナンテはこの女が少しだけ苦手だった。
ドフィがこの女をいきなり連れてきてはファミリーにしたのも分かる。
この女は自分たち兄弟の幸福の象徴だ。
美しく、清らかで、華々しく、暖かい。
そんなことは許されないとわかっているはずなのに、時間が許すまで彼女の側にいたいとさえ思ってしまうから、だからロシナンテはこの女、ヴィルが苦手だった。
銀食器で器用に、そして上品に料理を切り分けて小さな口へ運んでいく様は誰がどう見たって特級階級の生まれだろう。
海軍としての自分がヴィルをドフラミンゴの元から逃して、そして保護してやるべきだとは分かっていたが、遅すぎた。
ヴィルは、もう人を殺してしまっている。
彼女のタンザナイトの瞳は表面上はきらきらと純朴に輝いてはいるが、その奥ではどろどろとしたどす黒い欲望が渦巻いてヘドロのように粘着していた。
そのほとんどは執着となってドフラミンゴへ向かっている。
ヴィルのこれまでの経歴も能力も、ドフラミンゴを除いたファミリーは誰一人として知らない。
共に取引に出向いていたトレーボルならば何か知っているだろうと他のファミリーが聞き出そうとしていたが、すっぽりと抜け落ちたようにヴィルと出会った直後の記憶がないらしい。
もしかすると記憶を操作する系統の能力者かもしれない。
そのこともあって幹部の誰もがヴィルを警戒したが、彼女がファミリーに入って三ヶ月近くも経った今、警戒する者はもうほとんどいなくなっていた。
正直言って異常だ。
この海賊団の幹部は船長であるドフラミンゴのことを神か何かのように心酔している。
そんな彼らが、記憶を操作する力を持っているかもしれないヴィルのことを、彼女がドフラミンゴの記憶を操作した可能性を見落とすなんてあるはずがないのだ。
たった数ヶ月でこんなにも馴染んでしまうことに違和感を感じないなんて、あるはずがない、あってはならない。
ロシナンテは分かっている。
ヴィルのことをいくら苦手だと言っても、それが所詮は虚勢だと分かっているのだ。
彼女を前にすると、どうしようもない郷愁と慈愛と憐憫が心の中でごちゃ混ぜになって、優しく抱きしめたくなるような感情が身体を支配する。
目を合わせる度に魅了されていく。それが酷く恐ろしいことだと分かっているはずなのに、彼女の庇護下にいるのが堪らなく心地いい。
小さなステーキを食べ終えたヴィルは次に何を食べようかとテーブルの上を見渡し、どうやら生クリームと大粒のイチゴが乗ったショートケーキに目をつけたようだった。
しかしケーキはヴィルからは結構遠くに置いてあり、小柄な彼女には届きそうもない。
それに気づいたロシナンテは代わりにケーキを一切れ取ってヴィルに渡してやる。
三メートル近くある巨体は、その身長に比例するように腕も長く、楽に取ることができた。
少しきょとんとした顔をした後、ヴィルは花が綻ぶように笑って礼を言う。
「ありがとう。コラソン」
その笑顔に思わずこちらも微笑み「どういたしまして」と言いそうになるのを飲み込んで、無表情のままロシナンテは食後の紅茶を啜った。
そして次の瞬間吹き出す。
いつも通り、ロシナンテはドジって淹れたての熱い紅茶を冷ますことなく飲み込んでそのあまりの熱さに吹き出してしまったのだった。
吹き出された紅茶はそのままテーブルを濡らそうとしたが、そのまま空中で時間停止したように一瞬止まった後に元のティーカップへと一人でに戻っていく。
「まあ、コラソン。ちゃんと冷ましてからのまなくちゃ」
隣を見ればヴィルがくすくすと笑いながら、人差し指を空中で動かしていた。
どうやら今のは彼女が能力か何かを使って起こした現象らしい。
今度はロシナンテが唖然とした顔になって、会釈をするようにして頭を下げて感謝の意を伝える。
同じ食卓についた幹部たちが微笑ましそうに笑って、これで安心してドジれるじゃねえか良かったな、なんて言ってくる。
ドフィもいつもみたいに声を出すような笑い方ではなく、そっと微笑むようにして何も言わずヴィルとロシナンテを見つめていた。
微笑ましく笑う幹部たちに、優しく世話を焼いてくれる美しい女と、大切なものを見るような目で見てくる実兄。
ロシナンテはそんなことがあるわけないのに、自分が絵に描いたような幸せな家族の一人になったような気がしてしまう。
思わず流れ出しそうになる涙が視界を潤ませて、それを誤魔化すようにロシナンテは少し冷めた紅茶を一気に飲み干した。