構う理由
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「なまえ、もっと激しく腰を振れるかい?」
「はい、鶴見中尉……っ、」
執務室の椅子の上で、彼女は鶴見に跨りながら腰を上下に動かす。
扉に鍵をかけているとは言え、目の前の廊下では第七師団の兵隊が行来していて、なまえは鶴見と繋がりながら人の声が聞こえる度に顔がこわばった。
「なまえ、君は意外と恥ずかしがり屋さんだね。人の気配がする度に膣がよく締まる」
「それ、は……っ、ん、やっぱり、恥ずかしいです」
「良い事だ、女は恥じらいを捨てた瞬間、価値が下がる。恥ずかしいと思っている君をこうして悦ばせていると、興奮してより一層硬くなる」
鶴見は激しく突き上げ、なまえは突然奥の方に当てられ絶頂を迎える。
それと同時に彼も達し、生暖かい白濁の物を子宮に放っていった。
二人はしばらく抱きしめ合ったまま呼吸を整え、彼女はゆっくりと鶴見の上から降りていく。
そして乱れた衣服を着直し、鶴見の頬にキスをして色っぽく微笑んだ。
「今日も、可愛がって頂きありがとうございました。では仕事に戻ります」
なまえは頭を下げた後、鶴見の執務室を出ていき扉を締めた瞬間大きなため息をつく。
そして無理やり背筋を伸ばして廊下を歩き出した。
(生きる為生きる為生きる為……)
彼女が鶴見に尽くしているのは愛情からではない。
生きていく為だ。
鶴見に捨てられたら、なまえは生きてはいけない。
「女の匂いがするかと思えば、鶴見中尉のお気に入りのみょうじなまえさんじゃあないですかー?」
廊下の向こう側から歩いてきたのは、この第七師団の中でも厄介な男の一人である尾形上等兵だ。
途端に彼女は顔を引きつらせ、視線を逸した。
彼はわざとらしい敬語で声をかけて近づき、からかうように彼女の顔を覗き込んだ。
「何か、御用でしょうか?尾形上等兵殿」
「別に」
尾形は至近距離でなまえをジロジロと観察し、そして鼻で笑う。
彼女はただ無表情を貫いてそこに立ち続けた。
「頬がほんのり色づき、纏めている髪が少し乱れている。明らかに男に抱かれたばかりの女の顔だな」
「!」
「何びっくりしてんだよ?お前が鶴見中尉の性欲を処理している事くらい、この師団の人間は皆知ってる」
「!」
「それにしても、お前って本当にいい匂いがするよな?俺の落ち着く匂いだ」
尾形は彼女の背後に周り、首筋に唇を寄せるようにして匂いをかぐ。
彼の吐く息が首に当たり、なまえはビクッと震えた。
「どうした?男慣れしてるはずのお前が、男の吐息くらいで反応してどうする?」
耳に唇をつけるほど近い距離で囁かれたなまえは、尾形の低く色気のある声に身体の芯が熱くなり、慌てて彼から離れた。
だが尾形は後ろから捕まえるようにして抱きしめ、突然彼女の耳を舐め始める。
「なっ……」
「なんだお前、耳弱いのか?」
更に舐めようとする尾形から逃げるように、なまえは彼の体を押して引き離す。
そしてキツく睨みつけたが、彼は余裕の顔を崩さない。
「そういうの、やめてください」
「お前、今の生活……楽しいか?」
「……答える義理はありません。では失礼します」
なまえは尾形とこれ以上話すのが嫌で、歩き出そうとする。
だがその腕は掴まれ、彼女は引き止められた。
「もしもの話をする。ただの仮定だ、深く考えるな」
「?」
「もし、第七師団から逃げられるとしたら……お前は逃げ出したいと思うか?」
「……そんな未来、私にある訳がない。私は一生、鶴見中尉に従って生きていくしかないんですよ」
なまえは彼に掴まれた腕を振り払おうとするが、尾形は強い力で掴んで離さない。
それどころか、その力はどんどん強くなっていった。
「ちょっと、痛い……っ、離してください」
「俺はお前に惚れてる訳じゃねぇし、恋仲になりたい訳でもねぇ。だけど、日露戦争で活躍したお前の功績は認めている。だから……」
「何が言いたいんですか?」
「……さぁ?何が言いたいんだろうな。俺にも分からない」
彼女を掴んでいた手を離した尾形は、無機質で感情を読み取り辛い表情を浮かべた後、頭を掻きながら彼女をその場に残して歩き始めた。
なまえはその背中を見ながら、苦い顔をしている。
(なんなのあの人……いつもいつも私をからかってばかりで……意味が分からない)
尾形は前髪をかきあげながら歩き続け、自分自身がよく分からず苛々していた。
あの女性がどんな目に合っても一向に構わないが、見掛けると意地悪をせずにはいられない。
「“だから、一緒に鶴見中尉を裏切らないか?”……か。そんな台詞、言わずに済んで良かった」
言えば自分の計画が、鶴見に駄々漏れになっていた可能性が高い。
だがあの女性は、つい構いたくなってしまう不思議な魅力を持っていた。
尾形は振り返り、既に彼女が立ち去って誰もいなくなった廊下を見ながら、フッと小さく笑う。
そしてため息をついた後、自分の持ち場に戻っていったのだった。
〈終〉
***
皐月様へのお礼&リクエスト。
「不適格者な果実」の夢主で、第七師団にいた時の尾形夢です。
半分鶴見中尉夢になっちゃいましたが、尾形と険悪なようで甘いという、曖昧な関係のお話を書かせていただきました。
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