最愛
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だが。
「何!?」
カードを引いた男は驚いている。
それはそうだ。
ババに傷をつけておき、自分は傷のない方を引いたはず。
それなのに、今自分が引いたカードはババ。
「そんなはずはっ…!」
男はカードの裏に触れて確認する。
確かに傷はある。
(どういうことだ?)
「おい、次はオレが引く番だろ?」
焦る男にカイジは落ち着いて声をかける。
カイジは迷わずカードを引いた。
ババではない方のカード、ハートの6を。
「オレの勝ちだな。」
カイジはペアになったハートの6とダイヤの6をテーブルに投げ出す。
「やったぁ!」
衣織は思わず声を出して喜んでいた。
カイジはステージ上の衣織に優しく笑いかける。
これで彼女は帝愛から解放されるのだ。
「待て!一体どんな手を使った?」
負けた男はカイジを睨みつけた。
「オレが持ってたダイヤの6、その裏側を見てみろよ。」
カイジにそう言われ、男は急いでダイヤの6を確認する。
そこには傷がついていた。
男がババにつけたのと同じ位置に。
トリックはこうだ。
まず、6回戦で男がババの裏側に傷をつけておいた。
7回戦で、男はカイジからカードを引く時、傷のあるカードを避けて引き続ける。
そうして勝負は進み、カイジの手持ちがババとダイヤの6。
男の手持ちがハートの6。
ここで、カイジは自分の持つダイヤの6に、ババと同じ位置に傷を付けた。
しかし、それを知らない男は、傷はババにしかないと思い込んでいる。
カイジが男にカードを引かせる際の、カードの持ち方がポイント。
男目線では、2枚のカードの裏側が見える。
これを正確に言うと、1枚は裏側全面が見えるが、もう1枚はカード同士が重なっている部分が見えない。
カイジは、男から全面が見える方がダイヤの6になるようにカードを持った。
全面が見える方に傷があったので、男はそちらがババだと信じて、もう一方のカードを引いた。
しかし、実は男が引いた方のカードにも傷があったのだ。
ただカードが重なっていて見えなかっただけで。
「お前が傷を見てババだと思った方のカードは、実はオレが傷を付けたダイヤの6だった訳だ。」
あとは、カイジが男からハートの6を引けばいいのだがこれは簡単。
ババとダイヤの6は共に傷があり区別がつかないが、ハートの6には傷がないのだから。
「ひひひ…さすがはカイジくん、素晴らしい勝利だ。」
敗者が去った後、兵藤がカイジに話しかけてきた。
「約束通り、衣織は解放してもらう。」
カイジは兵藤を睨みつける。
が、兵藤は残酷な笑みを浮かべたままとんでもないことを言った。