最愛
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6回戦目はかなりババが動く展開となる。
カイジの手元にも何度も回ってきた。
そして、まずカードをいじりまくる男が上がる。
あとはカイジと、気持ち悪い笑みを浮かべる男の勝負だ。
今、ババは例の笑みの男が持っている。
彼の手持ちはババとダイヤの3。
カイジの手持ちはスペードの3。
そしてカイジがカードを引く番。
なんとしてもダイヤの3を引かなければならない。
ついにカイジは1枚のカードに手をかける。
が、一向に引かない。
(カイジ…どうしたの?)
衣織はあまりに長いこと動きを止めたカイジが心配になる。
いつまでも動かないカイジに、男はついにイライラし始める。
それこそがカイジの狙いだとも知らずに。
カイジの粘りに、男は表情を崩し始める。
今まで通り作り笑いを続けようとしているが、顔が引きつり、時折本音の表情が垣間見えるようになったのだ。
「ククク…読めたぜ、お前の本音。」
カイジは自信たっぷりに宣言する。
「いい加減にしろ!さっさと引け!」
カイジの態度に業を煮やした男が怒鳴りつけるのも気にせず、カイジは動いた。
「ああ、今引いてやる。…こっちをな!」
カイジが引いたのは、ずっと手をかけていたのとは別のカード。
それはダイヤの3だった。
手持ちのスペードの3と一緒にテーブルの中央に捨てる。
これでカイジは上がり。
「長時間表情を作り続けるのは不可能。作り笑いが崩れた時、お前は『そのカードを早く引け』って表情だった。つまりオレが手をかけていたカードがババさ。」
「…くそっ!」
カイジの粘りに負けた男は、会場を去った。
(良かった…さすがカイジ!)
あと1勝で、カイジと平和に暮らせる。
そう思うと、衣織は泣きそうだった。
そんな彼女のところに、兵藤が近付いてくる。
「さすがカイジくんだな。だが仲谷、お前が安心するのはまだ早い。ひひひ…。」
カイジ達には聞こえないような声で囁き、すぐに去っていく兵藤。
(どういう意味?)
確かにまだ7回戦が残っているから、安心するのはまだ早い。
その通りなのだが、兵藤の言葉にはそれ以上の含みが感じられた。
(とにかく今はカイジを応援しなくちゃ。)
不安は拭いきれないが、衣織のために戦っているカイジにできることは、応援することだけ。
それなら全力で応援しなくては。
ついに運命の7回戦。
2人でのババ抜き勝負。
カードが配られた時点で、ババはカイジの手に。
勝負は進み、互いに順調にペアを作ってカードを減らしていく。
だが、妙なことにババはカイジの手元から全く動かない。
(いくらなんでもおかしくないか?さっきの6回戦ではあんなにババが動いてたのに…。)
カイジは考える。
今相手にしているのは、カードをいじりまくっていた男。
もしかしたら、カイジの予想通りカードに細工をしているのかもしれない。
例えばババに目印をつけるとか…。
(あっ…!)
カイジは手持ちのカードの裏を触ってみた。
確かにある。
ババにだけ、僅かに引っ掻いたような傷が。
それはカードの裏の模様に重なってつけられており、傷があると知らなければ見落としてしまうようなもの。
(こいつ、やっぱり細工を…!)
おそらく6回戦でババが回ってきた時につけたのだろう。
(それなら、逆に利用してやる。)
(カイジ、何か思い付いたの…?)
カイジの正面にいる衣織には、彼の表情の変化が分かった。
あれは勝ちを確信した時の顔だ。
だが、気付けばカイジの手持ちはババを含めた2枚。
相手の男は1枚。
確実に追い詰められている。
そして、相手の男は自信満々にカイジからカードを引く。
「これでオレの勝ちだ!」
(そんなっ、カイジっ…!)