最愛
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伊藤カイジの元に遠藤が来たのは、その日の夜だった。
「衣織が…!?」
遠藤から話を聞いたカイジは思わず遠藤に掴みかかるが、部下の黒服に押さえつけられてしまう。
「気持ちは分かるが、会長の命令なんでな…。」
「くそっ!くそっ!なんで衣織がそんな仕打ちを…!」
ボロボロと溢れる涙を隠そうともせず、カイジは遠藤に尋ねた。
「オレはどうすればいい?どうすれば衣織を助けられる?」
いつもカイジを支え、助けてくれた彼女。
今度は自分が救わなくては。
「勝つんだ!」
遠藤は力強く言った。
「大切なら、勝って取り戻せ。」
「勝つ!絶対にだ!」
カイジは決意した。
今まで以上に、負けられない戦いだ。
遠藤はギャンブルの日時を伝えると、部下と共に帰っていった。
(待ってろよ、衣織。オレが必ず助け出すから…!!)
自分のせいだ、と思った。
ただ帝愛を辞めるだけで、ここまで酷い仕打ちを受けるとは思えない。
衣織が会長に目をつけられてしまったのは、自分と一緒にいるからに違いない。
カイジはそれから数日間、1人で過ごした。
本来なら衣織と幸せに暮らすはずだった時間が、とても寂しく過ぎていく。
何をしていても、一時も彼女を忘れることができない。
改めて、彼女の大切さが身にしみた。
* * * * * * *
そうして迎えたギャンブル当日。
カイジは約束通り、とあるビルの一室に来ていた。
やがて部屋の扉が開き―――
「衣織!!」
「カイジ!!」
久しぶりに見る、大好きな彼女の姿。
いくらか疲れているようだが、とりあえずは無事な姿にホッとする。
周囲に黒服がいるのも気にせず、2人はしっかりと抱き合った。
「良かった…オレ、もうお前に会えなかったらどうしようって…うっ…。」
彼女の体温を感じると、涙が溢れてきた。
衣織も泣いている。
「カイジ、ごめんね。私のせいでこんなことに…!」
「違う!衣織のせいじゃないから!オレの…オレのせいでいつも危険な目に遭わせて、本当にごめんな…!」
「ククク…久々の再会はどうかね、カイジくん。」
そこに現れたのは悪の根源、兵藤。
「てめえよくも…!今日のギャンブルはオレが勝つ!絶対に勝つんだ!」
「カイジ…。」
カイジは衣織を抱きしめる腕に力を込める。
「ククク…良い意気込みだ。彼女は我が社の社員、つまり会社の財産だ。それを奪おうというのだから、もちろんタダとはいかん。勝ってもらわにゃならん。」
兵藤は嫌な笑みを浮かべると、黒服に目で合図を送る。
黒服は抱き合っている2人を無理やり引き剥がした。
「いやっ!カイジっ!」
「なにしやがるっ!放せ!」
抵抗するも多勢に無勢。
兵藤はその様子を眺めながらカイジに向かって言った。
「サービスはここまでだよ、カイジくん。既に聞いているだろうが、今日のギャンブルの賞品は仲谷衣織。これを地下労働施設の代表者と奪い合ってもらう。」
遠藤の話によれば、カイジが負けた場合、衣織は地下労働施設で体を売らなければならない。
だから地下の住人と勝負という訳だ。
「安心しろ、衣織。オレ、必ず勝つからっ…!」
そのカイジの言葉はとても力強くて。
ずっと不安だった衣織の心に温かく響いた。
「信じてる!信じてるよ、カイジ!」