プリンがカフェオーナーになるまで・死描写・男主
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引き裂き、継ぎ接ぎ、
せんせいはどこから来たの?
「さあ、どこだろうな」
いくつ?
「プリンよりは長く生きている」
何が好き?
「こうやってつくったお菓子を食べてもらうのは好きだ」
せんせいの名前……
「おまえの好きに呼べばいい」
だって、それじゃ気持ちを伝えられない。
「大丈夫だ。ちゃんと伝わっている。安心しろ」
そういうことじゃないのに。せんせいのばか。
「ああ、そんな顔するな。悪かった」
反省しているなら、もっと態度で示して。頭を撫でれば全部許されるなんて思わないで。
「おれはプリンを幸せにできない」
知ってる。わかってる。それでも! 夢くらい見させて。一瞬でいいから私を満たして。
「一歩間違えれば虚しくなるだけだ。それでもいいのか」
私の気持ち、ちゃんと伝わっているのでしょう? いいってこと、わかっているくせに。
「最終確認だ。後戻りできねェぞ」
声色、口調、表情が一変したと思えば、いとも簡単に抱え上げられてしまう。一瞬の夢。一度だけ絡んだ精神と肉体。それでも翌朝には態度も距離感も元に戻ってしまった。以降、同じわがままをくり返したことはない。自分はビッグ・マムの娘。自由な恋愛は許されない。そう何度も自分に言い聞かせ、先生との関係を割りきろうとしていた。
あれから三ヶ月。先日カフェの建設も終わり、環境はすべて整った。しかし肝心のメニューが決まらない。四六時中キッチンにこもり何パターンもの新レシピを考案しても、最後には破棄してしまう。わかっている。原因なんてとっくの昔に気づいていた。
せんせい、くるしいです。教わったとおりに作っても、ちゃんとおいしくできても、試食すると、いつも涙が止まらないです。お菓子を食べる度にあなたを思い出して、会いたくなる。これじゃ、いつまでたっても前へ進めない。
「一歩間違えれば虚しくなるだけ、か。私、やっぱり間違えたのかな」
先生との思い出は作るべきではなかった。こんなにつらくなるなら、最初から知らなければよかった。くるしくて、くるしくて、もう全身が引きちぎれそう。このままだとママや兄さん姉さんたちも誤魔化しきれなくなる。
「先生が教えてくれたお菓子を、おいしく食べられるようになりたい」
半年前のフィルムを取りだし、先生の顔をひとつずつ切り抜いていく。
「せんせい、だい、すき、でした」
涙でフィルムがところどころにじんでいく。すべてを「カット」し終えた頃には、誰に製菓を教わったのかさえも忘れていた。
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