第一章
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呪いの石を入手後、あらためてナマエの生存率を読む。100パーセント。この二年十ヶ月、変化なし。タロットを消す。そばのナマエに呼ばれたので近寄ると押し倒された。体がベッドに沈む。
「あの。おねがいがあります」
なにを今さら、改まって。
「わたしを抱いて」
まずはこちらを拘束する腕を解く。その場で体を起こした。理由を聞く。島に降りるたび、酒場で女性に囲まれた。そして質問攻め。話題の大半は「魔術師バジル・ホーキンスとの関係」について。はじめはナマエも適当にあしらっていたが、シャボンディのサバトで核心を突かれる。「手も出さないのに何年も同じベッドで寝るのはおかしい」と。そしてシャボンディのクレナイに警告を受ける。さっさと男と寝ろ。さもなくば将来かならず命取りになる。マーメイドカフェでは店内奥でマダム・シャーリーと対面。マダムからも背中を後押しされた。
「わたし、本当はセックスしないといけなくて。卒業試験でやるはずだったのに」
ナマエがクレナイのくの一である件は本人から聞かされていた。自分と出会う前の二ヶ月間、記憶が定かでない、とも。
「義務感でおれに抱かれたいのか」
意地の悪い聞き方なのは百も承知。だが言葉が欲しい。
「それは。ちがう」
手を伸ばす。横へそらされたナマエの顔をこちらへ振り向かせた。か細い声が続く。
「セックスとかよくわかんない。でも、わからないからできずじまい。だったら、最初は信頼できる人がいい。私はホーキィのこと、信頼してるから」
もうすこし踏み込む。
「信頼だけで身を預けるのか」
「え……」
「おれはナマエを愛している」
ナマエの頬が色付いた。
「う、うん。あり、がとう」
礼を述べながら首を傾げる。その姿を見るうち、笑いが込み上げる。どうにか声を押し殺した。
「もしかして、変だった?」
何と返すか。サバト後に「愛」を伝えてから五ヶ月。依然、距離は変わりない。とにかく今のナマエには早い。早すぎる。そして懸念事項がもう一点。
「変ではないが、今回は断らせてくれ。すまない」
「そっか。そうだよね」
落ち込む姿を見たいわけではない。やんわりと抱き寄せる。
「おまえの命を削りかねない行為は避けたい。あと二年。待てるか」
新世界には進出できた。あくまで現世のタロットに従うが、ワノ国に入る未来もあるだろう。ナマエは二年後のワノ国で精神ダメージを負った。万が一に備えて今回も呪いの石は入手済み。クレナイ側がナマエの処女喪失を強要する理由は不明だが。現世におけるドフラミンゴの因果はすべて回避しきったのだ。あとは奴のシマをくぐり抜け、拠点を作る。四皇を倒す手立てを探る。
そのために何が起きるのか。脳裏にユースタスとキラーがチラつく。前世ではナマエと共闘し、心身ともに許した相手。あのとき、鬼ヶ島城内で再会した際、タロットで読んでいた。ナマエはユースタスにもキラーにも抱かれたのだと。
「二年後って、たしかワノ国でホーキィが」
ナマエには今後の未来をかいつまんで伝えていた。「前世と同じ道になるとは限らない」とも念押しした。
「ああ。おまえに傷を負わせてしまったのもワノ国だ」
前世の記憶がよみがえる。キングの拷問。ドフラミンゴの幻覚。あんな地獄は、二度と。
「ねえ、ホーキィ。もし、私の生存率が下がったら、ホーキィは悲しい、よね」
思わず息を止める。何を言い出したのか。
「ごめん。変なこと言って。なんでもない」
とっさに手をとる。
「言ってみろ。何もなくはないだろう」
沈黙が流れる。無言で何度もナマエが口を開閉させた。焦らず待つ。
「もし、できるなら。もっとあなたに近づきたい。ぎゅっとするだけじゃ足りない。もっともっと、くっついて──」
抱き寄せながら考える。どこまでならばナマエを傷つけずに済むか。鬼ヶ島城内でナマエを拘束した、あのとき。あのときは最大限己の欲を振り切った。振り切った先に、額へ口づけを、
「これで許してくれるか」
目の前の素肌に唇を寄せる。あのときと同じように考え抜き、他の部位を犯したくない一心でこの額に注ぐ。
「それ、私もやっていい?」
顔を上げたナマエと目が合う。まばたきのみで伝えれば顔が近づいてくる。額に感触。熱い吐息も一瞬。身震いに近い衝撃が。涙が出る錯覚まで。
「どう? 変、かな」
無心で抱き込んだ。なりふり構わずその場でナマエごとベッドに沈む。だが途中で我にかえり、即座に腕をゆるめる。何と言えば良いか。横たわったまま、向かいで目が合う状態が続く。ナマエがわらった。
「おでこはしていい?」
「ああ」
「いつでもしていい?」
「そうだな。この部屋なら」
「朝おきたときも?」
「ああ」
「じゃあ、寝る前も?」
「そんなにしたいのか」
「だって。いっぱいしたい。いっぱい伝えたい。ホーキィのこと、だいすきだから」
何と返すべきか。考えるうちに二度目のキスが届く。額まで顔を近づけるには、体のバランスをとる必要がある。こちらの首へ腕をまわし、しがみつく体勢で密着。それでも不安定になりやすいため、ナマエの腰へ腕をまわし、下から支えてやる。三度、四度。合間に頭ごと抱きしめられ、視界が塞がる。何を受けているのか、何を求められているのか。考えるのは放棄した。ただただ、無心でナマエの行為を受け入れる。
一年半後、ユースタスから雑な招待状が届く。そして。カイドウが天から降ってきた。
「あの。おねがいがあります」
なにを今さら、改まって。
「わたしを抱いて」
まずはこちらを拘束する腕を解く。その場で体を起こした。理由を聞く。島に降りるたび、酒場で女性に囲まれた。そして質問攻め。話題の大半は「魔術師バジル・ホーキンスとの関係」について。はじめはナマエも適当にあしらっていたが、シャボンディのサバトで核心を突かれる。「手も出さないのに何年も同じベッドで寝るのはおかしい」と。そしてシャボンディのクレナイに警告を受ける。さっさと男と寝ろ。さもなくば将来かならず命取りになる。マーメイドカフェでは店内奥でマダム・シャーリーと対面。マダムからも背中を後押しされた。
「わたし、本当はセックスしないといけなくて。卒業試験でやるはずだったのに」
ナマエがクレナイのくの一である件は本人から聞かされていた。自分と出会う前の二ヶ月間、記憶が定かでない、とも。
「義務感でおれに抱かれたいのか」
意地の悪い聞き方なのは百も承知。だが言葉が欲しい。
「それは。ちがう」
手を伸ばす。横へそらされたナマエの顔をこちらへ振り向かせた。か細い声が続く。
「セックスとかよくわかんない。でも、わからないからできずじまい。だったら、最初は信頼できる人がいい。私はホーキィのこと、信頼してるから」
もうすこし踏み込む。
「信頼だけで身を預けるのか」
「え……」
「おれはナマエを愛している」
ナマエの頬が色付いた。
「う、うん。あり、がとう」
礼を述べながら首を傾げる。その姿を見るうち、笑いが込み上げる。どうにか声を押し殺した。
「もしかして、変だった?」
何と返すか。サバト後に「愛」を伝えてから五ヶ月。依然、距離は変わりない。とにかく今のナマエには早い。早すぎる。そして懸念事項がもう一点。
「変ではないが、今回は断らせてくれ。すまない」
「そっか。そうだよね」
落ち込む姿を見たいわけではない。やんわりと抱き寄せる。
「おまえの命を削りかねない行為は避けたい。あと二年。待てるか」
新世界には進出できた。あくまで現世のタロットに従うが、ワノ国に入る未来もあるだろう。ナマエは二年後のワノ国で精神ダメージを負った。万が一に備えて今回も呪いの石は入手済み。クレナイ側がナマエの処女喪失を強要する理由は不明だが。現世におけるドフラミンゴの因果はすべて回避しきったのだ。あとは奴のシマをくぐり抜け、拠点を作る。四皇を倒す手立てを探る。
そのために何が起きるのか。脳裏にユースタスとキラーがチラつく。前世ではナマエと共闘し、心身ともに許した相手。あのとき、鬼ヶ島城内で再会した際、タロットで読んでいた。ナマエはユースタスにもキラーにも抱かれたのだと。
「二年後って、たしかワノ国でホーキィが」
ナマエには今後の未来をかいつまんで伝えていた。「前世と同じ道になるとは限らない」とも念押しした。
「ああ。おまえに傷を負わせてしまったのもワノ国だ」
前世の記憶がよみがえる。キングの拷問。ドフラミンゴの幻覚。あんな地獄は、二度と。
「ねえ、ホーキィ。もし、私の生存率が下がったら、ホーキィは悲しい、よね」
思わず息を止める。何を言い出したのか。
「ごめん。変なこと言って。なんでもない」
とっさに手をとる。
「言ってみろ。何もなくはないだろう」
沈黙が流れる。無言で何度もナマエが口を開閉させた。焦らず待つ。
「もし、できるなら。もっとあなたに近づきたい。ぎゅっとするだけじゃ足りない。もっともっと、くっついて──」
抱き寄せながら考える。どこまでならばナマエを傷つけずに済むか。鬼ヶ島城内でナマエを拘束した、あのとき。あのときは最大限己の欲を振り切った。振り切った先に、額へ口づけを、
「これで許してくれるか」
目の前の素肌に唇を寄せる。あのときと同じように考え抜き、他の部位を犯したくない一心でこの額に注ぐ。
「それ、私もやっていい?」
顔を上げたナマエと目が合う。まばたきのみで伝えれば顔が近づいてくる。額に感触。熱い吐息も一瞬。身震いに近い衝撃が。涙が出る錯覚まで。
「どう? 変、かな」
無心で抱き込んだ。なりふり構わずその場でナマエごとベッドに沈む。だが途中で我にかえり、即座に腕をゆるめる。何と言えば良いか。横たわったまま、向かいで目が合う状態が続く。ナマエがわらった。
「おでこはしていい?」
「ああ」
「いつでもしていい?」
「そうだな。この部屋なら」
「朝おきたときも?」
「ああ」
「じゃあ、寝る前も?」
「そんなにしたいのか」
「だって。いっぱいしたい。いっぱい伝えたい。ホーキィのこと、だいすきだから」
何と返すべきか。考えるうちに二度目のキスが届く。額まで顔を近づけるには、体のバランスをとる必要がある。こちらの首へ腕をまわし、しがみつく体勢で密着。それでも不安定になりやすいため、ナマエの腰へ腕をまわし、下から支えてやる。三度、四度。合間に頭ごと抱きしめられ、視界が塞がる。何を受けているのか、何を求められているのか。考えるのは放棄した。ただただ、無心でナマエの行為を受け入れる。
一年半後、ユースタスから雑な招待状が届く。そして。カイドウが天から降ってきた。