恋愛弱者が通ります
初々しいかよ。
「パックマンもあんな時期あったなー」
「それは存在しない記憶というやつだな」
「若い頃の話っ」
さながら恋人のように(恋人なのだが)指を絡ませて繋ぐも以降は視線すら交えることも敵わずただただ無言で後ろをついて歩くだけの二人を尻目に思い出される甘酸っぱいばかりの過去を懐かしむパックマンと呆れ顔のロックマン。
「今の恋人の前で昔の恋人の話をするのか」
「そういうのじゃ……、あっ」
と。パックマンは進行方向の先で何かを見つけたのか足を止めて二人を振り返る。
「……おい!」
ジョーカーとミカゲは揃ってきょとんと。
「あれやってこいよ!」
……あれ、って。
「ねーねーお願いごとした?」
「高身長高収入彼氏ができますようにってお願いしといた!」
「あははっなにそれぇー」
制服姿の少女らはくだらないやり取りをしながら小階段を降りると入れ替わりで横切った二人組に思わず目を奪われて振り返った。
「……かっこよくない?」
「ねーマジでこの鐘叶うやつかも……!」
桃色の想いを馳せる少女らには残念ながら目もくれないままミカゲとジョーカーが小階段を登った先に見つけたのは金色のベルだった。
成る程──どうやらパックマンがあれと称したそれは『希望の鐘』等という如何にもといった肩書きを持って冬のシーズン中街ゆく人々の観光スポットとなっていたようで。先程の少女らのように願いを込めて鐘を鳴らせばそれが叶うというジンクスでも
「……あの」
男女のペアが多いということは多くは語らずともそういうことである。それが今の今更だとしても小心者の彼が気にならないはずがないのだ。
「じ、……自分……なんかと、……一緒で、……い……いいんですか……ね……」