恋愛弱者が通ります
というか、これは。
今の今更ながらもしかして、しなくても。
巷で噂のダブルデートというやつなのでは?
「ミカゲ」
「はひょっ!」
先導するように先頭を歩くロックマンとパックマンの繋がれた手をドギマギとしながら見つめていればこれである。不意に声を掛けられたが直後顔を向ける間もなくミカゲはジョーカーに腕を掴まれて引き寄せられてしまった。いやいやまさかこの状況に感化されて大胆な──だだっ駄目駄目、街ゆく童の情操教育上宜しくないというヤツで御座るよおお──!……かと思えばチリンチリンと拍子抜けの婦人の漕ぐ自転車のベルの音。
「……大丈夫か?」
「あ、ぁ……はい」
ててててっ、手が触れておる……
「……あのさぁ」
二人を尻目に口を開こうとしたパックマンだったが即座にロックマンに引き寄せられた。
「ゔわっ!?」
「俺たちは俺たちで良いじゃないか」
普段そんなこと言わないのに!?
「ご、誤魔化すの下手かよ」
「嘘だと思うなら幾らでも証明しよう」
火照りを覚えて即座に顔を背ければくすくす笑う声に敗北を確信。……こいつ。
「ぁあ、あの……あの」
そんな二人のやり取りなどつゆ知らずミカゲは未だ腕を掴んだままであるジョーカーの手を見つめながら何やら言葉を濁らせる。
「させっ……しすせそ、……せせせ……」
言葉にならなくて我ながら草ァ!
「……手を、……その」
「、すまない」
気付いたジョーカーが手を離したが「ちが、」と声を漏らしながらミカゲは服の裾を掴んだ。それでようやく察したのだろうジョーカーは眼鏡の奥で目を背けながら弱々しく服の裾を掴むその手に触れると掬い上げて。……そのまま。