恋愛弱者が通ります
これまた珍しい面子で食事に行く流れとなってしまった。というか自分としては浮いた時間に気を張る上司と過ごすよりも録り溜めておいたアニメを消化したり漫画を読んだりゲームをしたりして有意義な時間を過ごしたかったんですけど……心の中でそんなことをぼんやりと考えていたのは無論ミカゲである。いやいや、心の声など聞こえないことが大前提なのだからどれだけ失礼でもノー問題なので御座るよ読者諸君。
「何か希望とかある?」
パックマンが振り返って訊ねれば後ろを歩いていたミカゲはぎくりと少し大袈裟に肩を跳ねて首を横に振り隣のジョーカーに視線を投げた。
「……特には」
「こういう時くらい若者らしく欲出しときなよーどうせ奢りなんだから」
つまらなそうにパックマンがぼやく。
「この時間は何処も混んでいるだろうな」
「安い店の話っしょ」
そう言ってパックマンは携帯端末をポケットの中から取り出すと何やら検索した後で、
「そこの信号渡った所のレストランに行こうよ」
レストラン、とは言ったものの。
「まだ決まんないの?」
フレンチレストランなんて聞いてない。
「十連ガチャが十回……いや、天井……?」
「早くしろよなー迷うような値段じゃないだろ」
未成年が軽いランチのノリで来ていいような値段設定じゃないですけど!?
「パックマンいつものこれにしよーっと」
「……お前は決まったのか?」
ロックマンが訊ねたのはジョーカーである。
「俺は……」
「ちょっ、ちょ……たたたっ、高いで御座るよ、それはぁあ……!」
指差そうとした料理の値段に目ん玉が飛び出る勢いでギョッとしたミカゲが咄嗟に服の袖を掴んで引きながら声を潜めて訴えかけていたが。
「お願いします」
まるで退路を塞ぐかのようにロックマンが店員を捕まえて。
「蓮。注文しなさい」
「ああ……」
「パックマンこれね」
「ミカゲは?」
「拙者は水と霞で」
「最初の彼と同じものをお願いします」
「む、無慈悲で草ァ……」