恋愛弱者が通ります
「……では」
その男は満足げにお馴染みの笑顔で。
「交渉成立ということで」
第四正義部隊フォーエス部隊。
結成されて早数ヶ月と語るべきか未だ数ヶ月と語るべきかそこは然したる問題ではない。兎にも角にも正義に準ずる数々の活躍と実績が認められて五つある正義部隊の中で最も評価されている──否、恐れられている組織であることに相違ない。
「営業の流れは掴んでもらえたかな」
その部隊の隊長を務めている男は部屋を退室して完全に扉を閉め切った後で此度の仕事に関しては後輩にあたる二人を振り返った。
「ま、難しく考えなくていーんじゃない」
付き添いの少年が口を開く。
「大抵は今のやり方でどうにかなるわけだし」
「どう見ても脅しだったんですがそれは」
引き気味の面持ちで返したのはミカゲである。
「可笑しなことを言う」
ロックマンはにっこりと笑って、
「どれだけ数を揃えて頭を下げようが頑として承諾はしない等と意気込んでいた相手だ。であれば此方もそれなりの姿勢を見せなくては寧ろ失礼にあたるというものだ」
よく言う──今日連れてきた中に暗殺を兼任している隊員がいるだのと持ち出しておいて!
「役に立ったんだし良かったじゃん」
「営業の内容が恐喝とは聞いてないです」
歩き出しながらパックマンが言うがそれでも納得いかない様子のミカゲに。
「ミカゲ」
もう一人の男、ジョーカーが口を開く。
「お手柄だった」
自分より後から入ってきた隊員の方が抵抗を無くしているとかいうこの状況。
「ブラック企業……」
「何か言ったかな?」
「ナンデモナイデス」
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