ルーティ危機一髪!?
珈琲を淹れたカップを小皿に戻しながら。
「……如何にも」
その人は目を細めて笑う。
「第四正義部隊フォーエス部隊が隊長──ロックマンとは俺のことだ」
エックス邸──食堂。
「……マジかよ」
そうは言ったところで見た目も声も自分たちがよく知っているあのルーティである。簡単に信じられるはずもなく眉間に皺を寄せながらまじまじと見つめるファルコに。
「マジだとも」
外見の割に大人びたように窺える口調も巫山戯た返しも確かにその人の癖そのもので。
「いやはや」
ロックマンは小さく笑みを零す。
「流石。災厄の目は誤魔化せないな」
──あの後。
剣士組が退室した後にフォックスに招かれて入室したリオンの証言により俄かには信じ難いこの事態が発覚した。心の中を透視する能力を持つ彼の前ではどれだけ演じたところで誤魔化しきるのは不可能だったというわけである。
「俺も最初はびっくりしたよ」
こっそり覗いていたリオンを発見したその本人であるフォックスは苦笑いを浮かべる。
「お前はお前で何してたんだよ」
「決まっているじゃないか」
リオンはふふんと笑って顎に手を当てながら。
「運動後の膝裏に滲んだ汗の匂いこそ至高!」
「制裁を下しても?」
「どうぞ」
足を組みながらにっこりと笑ってさらりと告げるロックマンにフォックスは真顔で即答。
「だぁッはあぁあんッ!」
十万ボルト。
「使いこなしているな……」
「それはどうも」
「本物のルーティはどこ行ったんだよ」
ファルコが言うとロックマンはそれまで浮かべていた笑みを消して椅子に座り直しながら。
「今頃は俺の体で会議中だな」
「大丈夫かな……」
不安を呟くフォックスにロックマンは安心させるべく声を掛けるかと思いきや。
「……正直まずいかもしれないな」
え?
「うちの隊員は警戒心が人一倍に強くてな。彼のことを俺に化けた敵だとでも認識したら最後何を仕出かすか分からない」
丸焦げの誰かさんが床に横たわって痙攣していることからも説得力がある。容易に想像が付くのがあまりにも恐ろしい。確かに彼ら正義部隊はそういう過激な思考の集団である。
「ボロを出さないことを祈るしかないな」
「例えば?」
「……そうだな」
ロックマンは顎に指の背を添えながら。
「呼び方を間違えるとか──」