兄さんなんか!
「……!」
天井に飾られた巨大シャンデリア。その装飾の要所要所に鎖で吊るされた鉄格子の鳥籠の形を模した檻の中には何と行方不明とされてきた者たちの姿が──キングテレサの子分たるテレサがその周辺を彷徨って悪戯に檻を揺らしたり脅かしたりとしているが反応は見られない。恐らく気を失っているのだろう。
「ルフレ!」
そうこうしている間にキングテレサはけらけらと高らかに笑い出すと室内に転がっていた棚や椅子、果てはグランドピアノまで念力を使って持ち上げルフレ目掛けて投げ付けた。慌てて叫ぶルイージに対し本人は動じず冷静に魔導書のページを捲り詠唱する。──そして。
「──エルウインド!」
ルフレの足下に緑色の魔方陣が浮かび上がる。
が。しかし。
「えっ」
直後に光は失せてしまい──
「ルフレ!」
砂埃が舞い上がる。笑い声が高らかに。
「だっ……大丈夫かい!?」
ルイージは急いで飛び出して倒れたルフレを抱き起こした。どうにか直撃は免れたようだが頭を切ってしまったのか血が垂れている様子が痛々しく思わず眉間に皺を寄せてしまう。
「油断、しました……」
ルフレは咳き込みながらルイージの手を借りて上体を起こしキングテレサを睨み付ける。
「まさか」
直後ルイージは何かに気付いたのか自身の手のひらを見つめた。いつものようにファイアボールを生成しようと意識してみたが何故だか仄かに光を灯しただけで上手くいかない。
「お相手さん賢いじゃん」
クレイジーが言った。
「足を踏み入れたら最後ってワケだ」