兄さんなんか!
逆らう余地もない。
あれよあれよという間に──
「うわっ!?」
突き当たりの両開きの扉が独りでに勢いよく開かれたかと思えばその先へ放り出されて──少し段差があったのか皆等しく硬い地面に強く体を打ち付けてしまったが無事であるに越した事はない。
「い、……ったた……」
「何なんだよ、もう……」
ルフレとクレイジーがそれぞれ打ち付けた箇所を摩りながら立ち上がる最中ルイージは落ちた帽子を手繰り寄せ被り直してひと息。こうまでされたのではお化け屋敷じゃないはずもないなと表情を曇らせたが何せ此方は二人と一柱。
今更怖いものなどあるはずが──
「る、ルイージさん!」
何処か焦燥を含んだ声で呼ぶルフレにルイージもいい加減に立ち上がり埃を払いながら振り返る。
「……え」
クレイジーが固まっているわけである。
「ひいいぃいいっ!?」
紫色の目。ギザギザした歯に青い舌。
白く巨大な幽体が特徴の。
「キングテレサ……!」
ルフレは迷わず魔導書を構えた。
「おっお前! 早くあれ何とかしろよ!」
「むむむ無理無理無理無理」
長い髪を垂れた女性だの上半身しかない男だのと比べればキングテレサの見た目はまだ可愛らしい方だがお化けはお化け。クレイジーはすかさず盾にするようにルイージの後ろに隠れて背中を押したがルイージも首がもげる勢いで横に振って断固拒否。これまで幾度となく世話になった相手ではあるが耐性など付くはずもない。
「、あれを!」
何かに気付いたのか声を上げるルフレに釣られてルイージとクレイジーが顔を向けると。