兄さんなんか!



「別に。違うからな!」

クレイジーはルイージの後ろに隠れながら。

「ホラーゲームもまともにプレイ出来ないようではこの先似たような展開が実際に起こったとして先が思いやられるとか何とか言われてついカッとなって口喧嘩になって飛び出して適当に空間移動したらここに迷い込んだとかそんな」
「大体分かったわ」


ツンデレは説明する癖でもあるんだろうか。


「何か言ったかしら」
「な、何も」

思っただけです!

「付いてくるのは勝手だけど足手纏いにならないことね」
「破壊神の僕を侮辱するのかよ!」
「幽霊に物理的な攻撃は通用しないわよ」

ああ言えばこう言う──知ってはいたが第四正義部隊フォーエス部隊と亜空軍は圧倒的不仲だ。X部隊と亜空軍は奇跡的に噛み合う事があって手を取り合う場面も多々あったが正義部隊にはそれが悪というだけで通用しない。問答無用で敵判定。

隊長を筆頭に頑なに受け入れないどころか情け容赦なく見つけ次第抹消しようとしてくるレベルなのだから当然のことながら亜空軍側からの印象も最悪という事態──それが正義と悪の正しい位置関係なのかもしれないが中立たるX部隊は物の見事な板挟み状態である。今みたいに。

「てーか、何処に行くんだよ」
「出口は真反対よ」
「な、」
「帰るならひとりで帰ってちょうだい」

ルフレが冷たく言い放てばクレイジーは何故かルイージの服の裾を強く握った。お前はそんなこと言わないだろとでも言いたげに。

「み、皆で帰ろう──」

仲を取り持つべくしてルイージが苦笑いを浮かべながら口を開いたその時である。

「きゃあっ!?」


突然、床が動いたのだ。


「なななっ何何何!?」

水平型エスカレーターのように。けれど此方の事情など知る由もないといったような速度で。それこそ掻っ攫うように。

「ひぃやああぁあああ!?」
 
 
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