兄さんなんか!
思わず口を噤んでしまった。痛い程に気持ちが分かってしまうのだ──いつも兄を誇りのように思う彼女も周囲に比べられる都度思うところはあったのだろうという事が。それでも尚兄の為に振る舞ってきたことも劣等感を感じてきた事も。
「……ルフレは」
「ルイージさんは」
言葉が重なってしまった。
「どうぞ」
「いや」
「先輩ですから」
こうなると頑なというやつである。
「……お兄さんのこと好き?」
「当たり前ですっ!」
勢いよく答えた後で。
「、……あ」
ルフレは顔を赤くしながら顔を背けてしまう。
「あはは」
ルイージは笑って、
「僕も」
嫌う理由になんかならない。
だって結局兄さんは凄いんだから──
「ひいっ!」
不意に通路の絵画が音を立てて傾くのだからルイージは情けない声を上げながらルフレの後ろに避難してしまった。それだけに留まらず少し先で重なるようにして倒れていた本棚がガタガタと震え出すのだから流石のルフレも顔を強張らせる。
「る、る、ルフレ!」
勇敢であることは大いに結構だが巻き込まれるともなれば話は別である。棚を震わせる正体を突き止めるべく歩みを進めるルフレにルイージはというと結局足が竦んで動けないまま目を見張るばかりで。そうしてルフレが本棚の目の前まで来た時何やら黒い影が勢いよく飛び出した。
「きゃああぁあ!?」
「ひいいい!?」
「わぎゃああああああっ!?」