兄さんなんか!
重い鉄製の扉を開けば、軋む音。
そっと足を踏み入れて二歩三歩進めば──
「ひぎぃい!?」
ルイージの悲鳴に釣られて肩を跳ねたルフレは大きく溜め息を吐き出すと振り返って。
「……驚かさないでください」
だって! 独りでに扉が閉まったんだもの!
なんて言い訳が通じるはずもない。ルイージは苦笑いを浮かべながら問題の扉を恐る恐る振り返った。まさかそれに加えて二度と開かなくなってしまったなんてことないだろうな。確かめたいがそれで実際そうだった日には泡を噴いて倒れる自信すらある。……やめておこう。
「ま、マーリオー」
「お兄さんと逸れたんですか?」
「いやそうじゃないけど」
とりあえずこれだけは言っておけの精神。ノルマのようなものである。
「ややこしいのでやめてください」
ごもっともです。
「か、勝手に進んでしまっていいのかい?」
何を恐れた様子もなくまさしく堂々と先を歩くルフレの後ろに情けないながらも隠れるようにして通路を進みながらルイージは訊ねた。
「お兄さんは」
「兄が居なくても一人でやってみせます」
力強い返答に口を噤んでしまう。
「……兄さんには悪いけれど」
ルフレは聞こえていても聞こえていなくてもいいといったような声で。
「それが。何よりもの証明になると思うから」