兄さんなんか!
難度はそれほど高いものでもない。
とある森の奥深く。霧に揉まれた先にある如何にもといった古びた洋館にはお化けが出てくるという噂。故に興味本位や好奇心で足を踏み入れる若年層が後を絶たない訳だが先日遂に行方不明者が出てしまった。ただ迷子になっているだけならいいが縄張りに踏み入られた奴らが何を仕出かすかなんて分かったものじゃない。
というわけで。
課せられた任務は人探しと──お化け退治。
「ひえっ!」
不意打ちで飛び立つカラスに体を大きく跳ねて情けない声を上げるルイージは今現在問題の屋敷があるとされる濃霧の森の中。兄さんにはお前には荷が重すぎるだとか何とか言われて、ついムキになって勢いで飛び出してしまったけど自分だって立派な戦士なんだ。一人だってこなせるさ!
「ひやあぁああ!?」
茂みが大きく揺れ動いて思わず腰を抜かし両手両膝を付きながら木の根本へ避難。情けないと分かりつつも事前情報が事前情報であるだけにどうにもならない──怖いものは全般的に苦手である。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「……ちょっと」
「いやあぁああ!?」
「うるさいったら!」
お、……女の子の声?
「まったく」
ルイージは恐る恐る振り返る。
「、……君は」