兄さんなんか!



それは。いつか分かる時が来るのだろうか。

……いいや。

いつまでも分からなそうだ。


兄さんはいつもそう。

ずるくて優しくてかっこよくて。


「……ありがとう」
「おうよ」


自慢の──


「まったく君は。無茶をして」

そう甘やかせないのもまた兄である。マークは今回の件について連絡を回していたようだったがやがて通話を終えると端末を胸ポケットに仕舞いながらぼうっと呆けていたルフレに近付きその額を指で小突いた。

「っ……ご、……ごめんなさい」
「怪我は大丈夫かい?……ああ……血が」

マークはポケットからハンカチを取り出す。

「……どうして」
「そういうものだよ」

ルフレは目を丸くする。

「マスターハンドに出くわしたのは予想外だったけど──結果として助けてもらったからね」

気付けば彼らの姿が見当たらない。

「予想外だなんて」

マークはきょとんとする。

「……これも策の内でしょう?」

ルフレが言うとマークは小さく笑った。

「……ああ」


兄という生き物は。

いつまで経っても敵わない。


「、ん?」

小石がぱらぱらと。

「うわっ!?」

ルイージは間一髪で瓦礫を躱した。

「にににに兄さん……!?」
「こりゃ派手にやり過ぎたな」


……ということは。


「これも策の内なの? 兄さん」
「ま、まあ。……うん……ご、ごめん……」


大崩壊。


「ひぃやああぁあああ!?」


その日一番の叫び声が木霊する。

……兄さんなんか。



end.
 
 
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